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2013-06-08

はてなのデザイン変更はイノベーションか。

何やらはてなの社長であるjkondo氏がTwitterでおもしろ発言をして話題になっている。





この発言ははてなブックマークの全面的なリニューアルに対する批判的な意見が多いことを受けてのものだ。ただし発言自身はjkondo氏自身のものではなく、増田(はてなAnonymousダイアリー)からの引用なので、厳密にはjkondo氏の言葉ではない。しかし当然ながらjkondo氏が気に入ったり共有したかったフレーズだから引用されたものであろう。(真相は違うかも知れないが、少なくともそういう印象は与えている。)

変化には抵抗勢力(jkondo氏曰く老害)がつきものだ。多数の反対意見は単に変化への拒否反応という可能性もあるが・・・果たしてこのデザイン変更はイノベーションと呼ぶにふさわしいものだろうか。

Short answer




もう少し噛み砕いた答え

おっと、失礼。少々表現が乱暴になってしまった。それではなぜイノベーションとは言えないかということについてもう少し噛み砕いて説明しよう。

見た目の重要さは否定しない。だが機能的に提供するものが同じならばそれはイノベーションとは言えないというのが私の考えだ。デザインをリニューアルすること自体は悪いことではないのだが、それがイノベーションとイコールで結ばれるのか?というのがポイントだ。デザインを変更することで使いやすく、あるいは見やすくなったならそれでいいじゃないかという意見もあるかも知れない。確かに進歩の積み重ねだってイノベーションだと言える。だが前回のはてなブックマークのデザインリニューアルは果たしてそう言えるだろうか。デザインの見た目が良いかどうかは好みがわかれるところだが、少なくとも私自身は次のような問題を認識している。

  • 同じ広さの画面から得られる情報量が少なくなった
  • ブラウザの表示速度、スクロールが若干スムーズではなくなってしまった

これらの点では、機能的には後退していると言える。従って私の答えはNoだ!

Windowsに見るUI変更の難しさ

UIのデザインを変更するのは本当に難しい。それは散々マイクロソフトがWindowsで実証してくれている。しかし何故か世の中にはUIの変更に対して慎重にならない人々が一定数以上いるようだ。もちろんはてなも含む。

ホットエントリーが1列から3列表示になったのは、言ってみればエクスプローラーのファイルを詳細表示からアイコン表示にするのぐらい違う。なのに「アイコン表示のほうがいいでしょ!おしゃれでしょ!」と言われても、どっちが好みなのかは人それぞれだろう。どうせやるなら過去のデザインも残すべきだった。

慣れというものは侮れない。もちろん、革新的で(使いこなせば)ずっと使いやすいUIを好む人はたくさん居る。しかし使い慣れた従来通りのデザインで満足している人も、それに負けないぐらいたくさんいるのである。新しいデザインかオーソドックスなデザインか。どちらが良いかを決めるのはユーザーなのだということを我々は忘れてはいけない。

イノベーションを実現するために

イノベーションとは何か。イノベーションを実現するにはまずその定義から考えねばならない。少なくとも、テクノロジーによって「これまでできなかったこと」が「できる」ようになれば、それはイノベーションと呼べるだろう。しかし、例のリニューアルでは「人気エントリーのアルゴリズムを見直し」はあるものの、基本的にはてなブックマークでできることは変わっていない。そういうケースでは、既存の「できること」が如何に効率的にできるようになるかということが(重度のはてなブックマーク依存者にとって)重要な課題であり、イノベーションであるはずだ。だが、前回のデザイン変更は効率化を目指したようなものではなく、使いづらくなっている面も否めないので批判が沸き起こったと考えられる。

また、イノベーションと呼べるようなものを実現するには、まずは現在のサービスの価値を正しく認識する必要があるように思う。はてなブックマークのサービスにはいくつもの側面があって、その組み合わせが他では提供できていないからこそ人気があるのだと思う。その価値とは恐らく次のようなものだろう。

  • ウェブページのコメントをハイジャック。
    コメントが承認制であってもお構いなしにページヘのコメントが書けるし、コメント欄すらなくてもページに対する評論を書きまくれる。そういった意味では「コメントを非表示にする機能」はマイナスポイントだ。
  • コメント機能は大きな制限がある。
    100文字までで返信等はできない書きっきり。ブックマークのコメントには批判的な意見が多く毒々しい感じが漂っているが、このような制限がなければネットの腐海と化していたことは想像に難くない。制限があるからなんとかバランスが保たれていると言える。
  • 話題のウェブページがわかる。
    ホットエントリーに沸き上がってくるページはおもしろいものが多い。全部見てたら恐ろしく時間が潰れてしまうから注意が必要である。
  • ユーザー数が多い。
    ソーシャルブックマークサービスの提供者として、はてなは日本では先駆者で在り続けてるように思う。ユーザー数が多いから、その分多くのブックマークが集まり、ホットエントリーやコメントを面白くしてる。

というわけで、個人的にははてなブックマークは恐ろしく絶妙なバランスの上で成り立ったサービスであるように思う。他の人が同じようなサービスを作ろうとしても無理であると私は考える。イノベーションは歴史的な偶然の産物であり再現は不可能だ。はてなブックマークもその中のひとつだろう。そして、バランスが絶妙であるがゆえに、既存のはてなブックマークに対してさらにイノベーションを起こすのは相当難しいだろう。

あと、ひとつ言っておきたいことがある。はてなブックマークは無理にオシャレにしなくても良いということだ。なぜならはてなブックマークは現在オシャレとは程遠いところにいるからだ。コメント一覧を見ると、そこにはインテリを気取った層からの上から目線で厳しいコメントがあふれている。毒だらけ、とげだらけ。全てのコメントをまともに受け止めれば心に突き刺さり、どんよりとした気分になること請け合いである。はてなブックマークは爽やかさやオシャレさとは無縁なサービスだと言える。オシャレな見た目は必要ないのだ。運営側にはそのことを自覚してほしいと思う。

最近、ニュース等にFacebookのコメント欄がついてるのをよく見かけるようになったが、Facebookははてなほどコメントが荒れていないように思う。精神衛生的にははてなブックマークよりFacebookのコメントを読んだほうが良い。やはりFacebookは実名制であるからコメントする方にも自制心がかかるのだろう。はてなの毒にやられたユーザーはFacebookのコメント欄で満足するようになる(≒ユーザーが流れる)のではないかとも思う。だからといってはてなが実名制になればいいとは思わない。毒やトゲもそれはそれで価値があるからだ。その独特の泥臭い立ち位置を是非キープして頂きたいと思う。(そういう意味ではダジャレで場を和ませるユーザーの存在ははてなにとって貴重であり、もっと大事にすべきなのかも知れない。)

やってはいけない!ボツアイデア

イノベーションを起こすのは難しいという点を踏まえ、「こんなはてなブックマークは失敗する」と思うアイデアを挙げておこう。(絶対に真似しないでください。)

  • コメントを返信可能にする。
    言い合いが喧々諤々と続くこと請け合いである。特に政治的な話題では右左からの水の掛け合いが止むことはないだろう。
  • コメントの文字数を増やす。
    現在100文字までのところを一気に10000文字ぐらいに増やしてしまう。コメントを読むだけで疲れてしまうこと請け合いである。
  • 悪いね!ボタン。
    いいね!の反対。はてなスターは良い意味でしかつけられないが、コメントが気に入らないという意思表示ができると荒れること間違いなし。

というわけで、外野はロクなアイデアが浮かばないのでぜひともはてなの皆さんには頑張って改良に励んで頂きたいと思う。

おすすめのイノベーションの実現方法

やはり既存の「はてなブックマーク」というサービスを大胆に改良するのはリスクが伴う。(デザインですらユーザーの反応はこの始末だ。)はてなブックマークそのものを改良することでイノベーションを達成するのではなく、ブックマークと連携する新たなサービスを開発するのが良いのではないかと思う。新たなものを作って人々に利用されるようになれば、それは間違いなく今までにないものであり、イノベーションだといえる。新しいサービスを成功させるのは難しいし、何が成功するかなど誰も事前にはわからないので、成功させるには数を撃つということが必要だ。はてなのやり方は反対で、アイデアを練って練って温めて成熟したものだけをやろうとしている印象がある。しかしそれでは上手くいかないだろう。既存のサービスを保守しつつも、新しいサービスにどんどんチャレンジするべきなのである。「もっと数を撃て!!」この言葉をはてなに贈り、エントリを締めくくりたいと思う。

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