今日はコンピュータの話題ではないので興味がない人はスルーして頂きたい。
本書は今まで手にした書籍の中で飛び抜けているかも知れない。手にした瞬間びっくりした。非常に薄いからだ。なんと、本文がP.50そこそこしかない。要点はそこじゃないだろ!と自分でも思うが、この点が一番印象に残ってしまったので、どうしても冒頭で述べておきたかった。
ちなみに、本書ではNHK受信制度は日本国憲法にそぐわないということが丁寧に説明されている。筆者である天野氏によると、それは放送法自身が日本国憲法から逸脱しているからだそうだ。放送法に疑問を持ってモヤモヤしている人がスッキリするには最適の一冊であると言える。
書評でネタバレをしてもしょうがないので、あまり中身にはふれないでおこうと思う。以下もくじ。
- 放送法は「法律」とは言えない
- 放送法施行規則は「規則」とは言えない
- 憲法に受信契約締結義務はない
- 公共の福祉のためなら費用は国庫負担
- 強制契約は「契約」とは言えない
- 英国BBCとの比較は無意味
- 受信料裁判で勝てない理由
- 放送法の制定過程
「薄い」というのを好意的に取れば、よくまとまって要点が絞りこまれているとも言える。P.50そこそこなので直ぐ読んでしまえるので、時間のない人でも読めるというのは利点かも知れない。
本書を読んで、筆者は「公共放送は今のあり方でいいのか」ということを考えるようになった。公共放送に求められるべき要件とはどのようなものだろうか。すぐに頭の中に浮かんだのは次のようなことだ。
- 放送の内容が中立であること。
- 放送される映像のライセンスが再配布可能なものであること(例えばCCLのように)
- ユーザーからのフィードバックを番組に反映させること
- 経費の使途が公開されていること
- 料金が安いこと、または税金で運営されていること
こういうことは多くの人が考え、声を出していかないと変わらないと思うので、ぜひ多くの人に本書を手にとってみて頂きたいと思う。まあ「公共放送がこれからも本当に必要なのか?」という根本的な疑問もあるかと思う。(テレビ離れが進めば必要ないのは自明だからだ。)
ところで、放送法の第六十四条には、次のような条文がある。(本書では関連する法令として、旧第三十二条として紹介されているので注意)
第六十四条 協会の放送を受信することのできる受信設備を設置した者は、協会とその放送の受信についての契約をしなければならない。ただし、放送の受信を目的としない受信設備又はラジオ放送(音声その他の音響を送る放送であつて、テレビジョン放送及び多重放送に該当しないものをいう。第百二十六条第一項において同じ。)若しくは多重放送に限り受信することのできる受信設備のみを設置した者については、この限りでない。
この条文を裏返して読むと、「協会の放送を受信することができない受信設備を設置した者は、協会とその放送の受信についての契約をしなくてもよい。」と読めるのだが、例えば思考実験として、NHKの電波だけを受信できないフィルタをつけたテレビを開発したら、受信契約の扱いはどうなるだろうか。もしそれで受信契約が必要ないという話になれば、爆発的に売れる可能性はないだろうか。メーカーがそういう商品を開発しないのはなぜだろうか。などということを考えてしまう。話の脱線はこのへんにしよう。
ここらで強引にまとめると、本書はページ数は少ないが、スッキリと要点がまとまっているので、普段から放送法に疑問をいだいてモヤモヤしている人に最適な一冊である。
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