Publickeyで紹介されていた雑誌、「みてわかるクラウドマガジン」を読んでみた。今やIT業界では右を向けばクラウド、左を見てもクラウド、猫も杓子もあばたもほくろも(違)クラウドである。そんなIT業界を代表するバズワードである「クラウド」だが、それゆえその実体を(世間では何をもってクラウドと呼んでいるかということを)把握するのは難しい。クラウドという言葉を考えるには、ITに関する浅く広い知識が必要となる。そこで、一見の価値があるのが「みてわかるクラウドマガジン」だ。
構成
本書の構成は次の通り。クラウドを俯瞰的に展望できる構成になっている。- いますぐクラウドを試そう
- Amazon EC2/S3を見て体験!
- Google App Engineを使ってみよう
- Force.comをちょっと使う
- 絶対わかるクラウド技術
- Hadoopを使ってみる
- クラウドを支えるKey-valueストア
- memcachedを使ってみる
- 話題のkumofsってなに?
- Rubyで動く「ROMA」
- NoSQLの世界
- MongoDBを試してみよう
- Twitterも使い始めた「Cassandra」
- 徹底解説 クラウドサービス
- クラウドを自作する
- GmailとDropboxが使えるライブ版USBを作ろう
- GoogleのクラウドOS 最新「Chrome OS」をビルドする
- Eucalyptusで作るプライベートクラウド
「いますぐクラウドを試そう」ではクラウドはどのような仕組みなのかということが分かり、「絶対わかるクラウド技術」ではクラウドでどのような技術が活かせるかということが分かり、「徹底解説 クラウドサービス」ではどのようなクラウドサービスが世の中に存在するのかが分かり、「クラウドを自作する」ではクラウド基盤の作り方がチョットだけ分かるという寸法だ。なるほど、タイトルに偽りはない。
記事の内容とか
記事は浅く広く書かれているが、決してそれぞれの記事のクオリティが低いというわけではない。各種ソフトウェアの紹介記事では、使い方の導入部分(インストール方法+チュートリアル程度)が一通り分かるようになっている。単なる技術要素を紹介するだけではなく、実際に利用するところまで少ないページ数で解説されているところが心憎い。中でも、比較的多くページ数が割かれているHadoop、そしてRubyの産みの親であるまつもとゆきひろ氏によるMongoDBの解説記事は特に見所だ。「徹底解説 クラウドサービス」では、クラウドサービスを提供する35社のスペック比較表が付属しており、これからクラウド上でサーバーもしくはサービスを調達しようと考えている人には打って付けの内容となっている。
で、MySQLは?
本書についてひとつ苦言を呈するとしたら、MySQLをはじめとする既存のオープンソースソフトウェアの存在について触れられていないことである。Amazon EC2などの[P|I|H]aaS型のクラウドサービスを利用する場合、安価にシステムを構築できるという観点においてオープンソースソフトウェアの利用は欠かせない。特に、非常に高速で安定したオープンソースRDBMSであるMySQLは、クラウドにおいて欠くことのできない存在であると言えるだろう。今さら解説する必要はないと判断されたのかも知れないが、オープンソースソフトウェアの利用についてはもう少し触れるべきだったんじゃないだろうか。今回出版されたものには「vol.1」という番号がついているので、今後vol.2が出る際にはMySQLの利用についても触れて頂きたい。1:Nのマスター・スレーブ型レプリケーションは、Amazon EC2上でもよく使われるテクニックである。
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