先日のエントリの続きだが、リカンベントは速度が出るからスピードが出すぎて危ないというような意見を多く見かけるので、ひとこと行っておく。
言いたいことはひとつだけ。「リカンベントとひとことで言っても、色々なモデルがある。だから必ずしも速いとは限らない。」ということだ。
アップライトの自転車にママチャリからロードバイク、マウンテンバイク、クロスバイクなど色んな種類があるように、リカンベントと言っても様々なタイプのものが存在する。もちろんレース用にチューニングされたものから、街乗り用のコンフォートモデルまで様々だ。前者は最高速度は速いが、後者はそうでもない。むしろアップライトのスポーツ車両よりも遅い場合が多い。
なぜか。
リカンベントが速いとされる理由は、空気抵抗が少ないからだ。空気抵抗を減らすには、身体の進行方向に対する投影面積を小さくしなければならない。そこで重要になるのがシート角である。大雑把に言って、レース用のモデルはシートが大きく倒れて、より寝そべった体勢で乗車する形になる。最も極端な例として、アワーレコードを狙うようなモデルでは、次のページにあるように殆ど寝るような角度で乗車する。つまりシート角は0に近い。当然このようなモデルはトラック専用であり、街なかで見かけることはないので安心して欲しい。(カウル付きのものはまたジャンルが違ってくるのでここでは触れず、後述する。)
1h Büttgen 2016 - Droplimits - Website für Liegeradsport
一方で、街乗り用のコンフォートモデルでは、それほどシート角は倒れておらず、そのためスピードも出ない。先日亡くなった漫画家の方のモデルが、下記の写真の左下のほうに写っているので見て欲しい。シートがかなり立っており(45°ぐらいだろうか)、当然ながらその分空気抵抗も大きくなる。
小路啓之 雑草家族・10歳かあさん連載中の投稿画像
フロントフォークにはサスペンションもついており、スピードよりも快適性を重視したものであることが分かる。スピードはそれほど出ないだろう。と言っても下りでは当然重力によって加速されるため、それなりの速度は出てしまう。例えば30km/h程度であっても、打ちどころが悪ければ命に関わることは疑いようがない。それは他の自転車、例えばママチャリだって同じことである。
リカンベントすべてをひと括りにして語るのは、ママチャリとロードバイク、マウンテンバイク、クロスバイク等々を一緒くたにしてしまうのと同じであると言って良い。そのような認識は如何に乱暴なものであるか、お分かりいただけるだろうか。だから車種がリカンベントというカテゴリだけでは、速いかどうかは判断できないのである。
ところで、カウル付きのリカンベントは確かに速い。カウルによって空気の渦ができにくくなるため、空気抵抗が格段に小さくなるからだ。ただし、カウルをつける分重量は増えるので、上り坂にはさらに弱くなるという欠点がある。カウルつきのものはベロモービルと呼ばれており、独自の発展を見せている。下記の動画では、プロのロードレースの選手の横を、優雅に走る姿が捉えられている。
※解説の人が「下りでは250km/hぐらいじゃないですか?」みたいなことを言ってるけど、そんなに出るわけがないので悪しからず・・・。自転車のダウンヒルにおける単独走行の世界最高速度は、223.3km/hである。
ベロモービルは日本では殆ど見かけない乗り物だが、電動アシストつきで上り坂も苦にならず、なおかつ屋根がついているため雨天時も乗れるタイプのものなどが、海外では自動車に代わる新たな通勤手段として若干注目を浴びているように感じている。下記に挙げるように、ベンチャーなどから色々なモデルが出ていたりするのだ。確かに自動車と比べると遥かにエコなので、これはこれで社会が目指すべき方向の一つかも知れないと感じている。
まだこのタイプの乗り物は黎明期もいいところなので、この方向性に世界が動くかどうかは現時点では分からない。石油が値上りしなければ、ベロモービルに出番は回ってこないような気がしなくもないが、石油が高くなればそれなりに需要が増えるように思える。
そういえば、ブリジストンが2020年の東京オリンピックに向けて、電動アシスト付きのベロモービルを提供するというような話もあったので、東京オリンピック後には意外と日本でも流行ったりするかも知れないなと、ほんの少しだけ思わなくもない。リカンベントが広く認知されれば、偏見も減るだろうと思われるので、個人的には流行ってくれると嬉しいのだが、果たしてどうなるだろうか。
Bridgestone's pedal-electric trike looks sharp, and might reach production
ブリヂストンが、東京オリンピック選手村の移動手段として、電動リカンベントを供給する予定みたいですよ? スポーツサイクルまったり選び
ところで、リカンベントライダーの方が一問一答式でわかりやすく(そして面白く)リカンベントに対する疑問をまとめてらっしゃるので、気になる方はぜひご一読頂きたい。
リカンベントへの噂に答えてみる 闘神の日々雑感/ウェブリブログ
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