ちょっと硬派なコンピュータフリークのBlogです。

カスタム検索

2011-06-07

Linuxデスクトップ戦争勃発

今、Linuxデスクトップ界には大きな変化が起きている。デスクトップ向けに利用される二大ディストリビューションであるUbuntuとFedoraにおいて、いずれもデフォルトのデスクトップ環境が従来型のGNOMEではなくなってしまったのだ。4月にリリースされたUbuntu 11.04にはUnityが、5月にリリースされたFedora 15にはGNOME3がそれぞれ搭載されている。(GNOMEそのものが激変してしまったのである!)

Linuxデスクトップのシェアはとても小さい。このブログの読者を含め、ほとんどの人にとってはLinuxデスクトップにどのような変化が起きたとしても、そんなのはどうでもいいことだろう。だが、二大ディストリビューションで同時に変化が、しかもエポックメイキングな変化が訪れたのはただごとではない。筆者には、この変化が新たな時代の幕開けに思えて仕方がないのである。今日は、それぞれのデスクトップ環境の特徴を紹介しつつ、今後の行く末について占ってみたいと思う。

3Dデスクトップが標準に

UnityとGNOME3(のGNOME Shell)の共通して言えることは、両方共3Dを活用したデスクトップ環境だということだ。などというと、これまではLinuxで3Dデスクトップが利用できなかったのか?と思う人が居るかも知れないが、そうではない。これまでも、デフォルトはあくまでも2Dであったが、CompizCompizを導入することで3Dデスクトップが利用可能だった。(Compizの設定などについては、筆者が以前書いたエントリを参照して頂きたい。)

いずれのデスクトップ環境を使うにしても3Dグラフィックスの機能は必須であるが、最近のマシンにはほとんど3Dグラフィックスの機能が搭載されているため「機は熟した」と判断したのだろう。3Dグラフィックスの機能がない場合、自動的に従来型の2Dデスクトップ環境に切り替わるという動作も共通である。

余談だが、UnityとGNOME Shellでは3Dデスクトップの実装へのアプローチが違う。実は、UnityはCompizのプラグインとして実装されており、すでにあるCompizの資産を利用することにより、多彩なエフェクトを実現している。(その気になれば自分でCompizのプラグインをいじってカスタマイズすることも可能だ。)一方、GNOME3ではMutterという新しいウィンドウマネージャが導入されている。MutterがClutterというグラフィックスライブラリを呼び出して、OpenGLによる描画を実現している。

徹底的な省スペース

いずれのデスクトップ環境もネットブックなどでも快適に利用できるような配慮がなされており、興味深いのは次のような共通のデザインが見受けられることだ。

  • 画面の上部に細長いパネル(メニューやタスクトレイなどを配置)
  • 画面の左側にランチャ(アプリケーションのアイコンが並ぶ)
  • Windowsキーを押すとアプリケーションの検索やブラウズを行うダイアログが現れる。

いずれもこれまでのデスクトップ環境と比べるとスタイリッシュかつシャレオツであり、使っていて楽しい。アプリケーションが利用できるスペースが広いというのはイイことで、別にネットブックのような限られたものでなく、FULL HD以上の環境であってもスペースが有効活用出来るというのは重要である。

Ubuntu Unity

ここからは少し実際の画面を交えて紹介しよう。以下は筆者のPCで撮影したUnityのスクリーンショットである。何もない状態では、次のように画面上部のパネルと画面左側のランチャが表示されている。
※右側にごちゃごちゃ表示されているのはconkyだ。筆者が自分で導入したので、Unityを導入したままの状態では表示されない。


次のスクリーンショットはWindowsキーを押したところ。このメニュー画面はDashと呼ばれる。画面左上のアイコンを押すことでもDashを呼び出せる。テキストボックスでは、インクリメンタルにアプリケーションや最近使ったファイルを検索することが出来る。


ランチャにあるWorkspace Switcherアイコンをクリックすると、次のようにワークスペースの一覧が表示される。これはCompizのExpoと同じ効果。


余談であるが、Unityではデスクトップを極限までシンプルに保つため、右上に表示されるシステムトレイのアイコンが、限られたものだけを表示するホワイトリスト方式になっている。シンプルに保つため余計なものを隠すというアプローチは効果があるかも知れないが、筆者の好みではない。そこで、筆者は次のコマンドを実行して、ホワイトリストを無効にしている。

shell> gsettings set com.canonical.Unity.Panel systray-whitelist "['all']"

GNOME Shell

以下は何もしない状態。ランチャも表示されず、Unityよりさらにすっきりしている。


Windowsキーを押して「Activities」を表示したところ。画面の左側にはランチャが表示される。ウィンドウがあればCompizのScaleのように(OSXのExposeのように)一覧表示される。画面の右側には仮想デスクトップの一覧が表示されている。通常の状態が「何もない」のに比べて、Activitiesはまさに「全部入り」の状態だ。「何かしたければWindowsキーを押しておけ!」という設計思想が感じられる。


仮想デスクトップは「使うと勝手に増える」方式。下記はウィンドウのひとつを、2つ目の仮想デスクトップへドラッグ&ドロップしたところ。自動的に3つ目の仮想デスクトップが現れる。ニーズに合わせて自動調節してくれるという寸法だ。


GNOME Shellはそのままでカスタマイズできる項目がとても限られている。独学Linuxでカスタマイズ方法が紹介されているので、GNOME Shellを使うぞ!という人は是非参考にして頂きたい。(筆者もここを参考にしてテーマセレクタを導入した。)

使うならどっち!?

筆者の感覚では、安定性はUnity、革新性ならGNOME Shellといったところだ。方向性は似ているが、操作感は似て非なるものとなっている。ぜひ両方使って新たな世界を体感して頂きたい。いずれのデスクトップ環境も3Dを活用しているため、仮想マシンでは威力を発揮できない。空いているHDDなどがあればそれにインストールし、是非ネイティブで使ってみよう。

どちらも気に入らず、「やっぱり従来型のデスクトップが良いよね!」という人は、いずれのディストリビューションでも従来型のGNOMEが利用できるようになっているので、そちらを利用すると良いだろう。だが、GNOMEはこれからGNOME Shellの進化へと大きく舵をとろうとしている。従って、従来型のGNOMEデスクトップ環境にはさらなる進化は期待出来ない。

そんな人はGNOMEを見切って、KDEやXfceなどの他のデスクトップ環境へ移行するのもアリだろう。特にKDEはボタンやツリービューなどの描画がいちいち美麗であり、便利なアプリも満載されていて個人的にとてもオススメである。(筆者はUnityを使ってはいるが、KDEアプリもたくさん愛用している。)

モバイル向けに設計されたMeeGoを搭載した製品が販売されようとしているのも興味深い。

動画:10.1インチ薄型 MeeGo ノート Eee PC X101、200ドル

UnityやGNOME Shellよりももっと斬新なUIを体験したいという人は、こういった選択肢もアリだろう。なんとお値段たったの200ドル。筆者も是非欲しい。

変化はLinuxだけにとどまらない?

既存のユーザー体験を否定して、新たな試みを導入しているのは(マイナーな)Linuxデスクトップだけというわけではない。それは次のニュースからも分かる。

速報:マイクロソフト、Windows 8 を公開。タッチ対応の Metro UI を標準採用

このニュースではWindows 8のGUIが動画で紹介されているが、Metro UIはWindows 7のUIとはまったく違う。出自がWindows PhoneだからWindows 7と違うのは当然といえば当然であるが、筆者は正直なところ戸惑いを隠せない。

「既存のUIに慣れたユーザーは新しいUIを使いこなせるのか?」

というのが真っ先に思い浮かんだ疑問である。慣れは非常に大事だ。特にPCにさほど詳しいわけではない一般的なユーザーにとって、UIの劇的な変化は一大事である。せっかく覚えた操作をまた一から覚えなおさないといけないからだ。それは購買意欲の低下に繋がるので、ベンダーにとってはかなりのリスクである。しかし、それだけのリスクをとってもなお、UIを新しくしなければいけないという決断に至ったのだろう。

マイクロソフトやUbuntu、GNOME3に新たなUIへの決断を迫ったのは一体なぜか?

アプリケーションのほとんどはWebに移ったから、モバイル性が重視されるから、iOSやAndroidなどのスマートフォン用OSにシェアが食われるから、ユーザーがタッチインターフェイスに馴染んできたから等々・・・理由は様々なものが挙げられる。だが、どれかひとつの理由を選べと言われても、筆者は絞り込むことが出来ない。様々な理由が複合的に絡み合い、大きな甕ねりとなって業界に変化をもたらしたのではないか。つまり、機は熟したのだ。

これからのデスクトップコンピューティングはどうなってしまうのだろうか。さらに大きな変化が現れることは疑いの余地がない。どれが生き残るかはまだ誰にも分からない。コンピュータを愛するひとりとして期待に胸をふくらませつつ、今後の動向を見守って行こうと思う。

2 コメント:

sta さんのコメント...

こんにちは、こんばんは。

本エントリーの内容とは関係ないのですが、質問させて下さい。

本エントリーを Google +1 しようと思い、+1 ボタンを押下して、ちゃんと +1 されているのか確認したところ、本エントリーそのものではなく、本エントリーのはてブページに +1 されていることが分かりました。

本エントリーに対して +1 したつもりだったので、少々意外なこともあり、そういう仕様なのか?そういう仕様で大丈夫なのか?と聞いてみたくなりました。変な質問で申し訳ありません。

Mikiya Okuno さんのコメント...

staさん、

指摘ありがとうございます!

テンプレートのURLが間違っていたようです。(近隣のはてブボタンをコピペして作ったため。初歩的なミスでした。)

コメントを投稿