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2011-06-14

LPI-Japanによるオープンソースデータベース技術者認定試験の名前を見直すべき5つの理由

前回のエントリでは、真のオープンソースとは何か?と題して、LPI-Japanがオープンソースの定義を間違えているという点を指摘した。今回はさらに別の角度から、この認定試験の名前を変更するべき理由について考えてみたい。

1. オープンソースなRDBMSはPostgreSQLだけじゃない

オープンソースのRDBMSと言えば、日本ではMySQLとPostgreSQLが人気を二分している。*1Googleで検索された回数であれば、MySQLのほうがやや有利だろうか。Googleの検索回数が多いからそれがどうしたと言われそうだが、日本で認知されているオープンソースRDBMSがPostgreSQLだけではないことは確かだろう。

オープンソースなRDBMSということでMySQLが使われる機会は多い。従って、上司や顧客から

「君、OSS-DB認定試験を持ってるんだって?じゃあMySQLの構築頼むよ。」

と言われるシチュエーションに出くわす可能性*2は十分に考えられる。OSS-DB Examは、PostgreSQLだけしか知らない人でも取れるが、そのような人が「オープンソースなデータベース管理システムだから」という理由でMySQLの構築を頼まれたらどうすればいいか?構築ぐらいならまだしも、チューニングやトラブルシューティングなどはかなり無理があると思うのは筆者だけだろうか。

2. データベース?

「データベース」という表現もよくない。データベースでは意味が広すぎるからだ。データの集合だってデータベースだ。

PostgreSQLは(リレーショナル)データベース管理システムだ。*3「管理システム」という部分を抜かして単にデータベースと表現するのはいかがなものか。さらに正確に表現するなら「リレーショナル」ということを明記すべきだ。NoSQLなものだってデータベース管理システムなのだから。

名称が不合格!!

3. "オープンソース"がバズワード化する

既にかなりバズワードと化している気がしなくもないが、何でもかんでも単に「オープンソース」という言葉で表現してしまうと言葉の価値が下がってしまう。オープンソースという単語は日本国内において商標登録されているが、誰でも自由に使うことができる。(参照:オープンソース商標について)なので、件の「オープンソースデータベース技術者認定試験」は商標的には問題ない。

もし仮に、MySQLを題材にして「オープンソースデータベース管理システム技術者認定試験」なるものを誰かが立ち上げたとしよう。そして、さらに他の誰かがFirebirdを題材にして「オープンソースRDBMS認定試験」なるものを立ち上げたとしよう。またさらに別の誰かがTokyo/Kyoto Cabinetを題材にして・・・(以下略)猫も杓子も「我こそがオープンソース」と言わんばかりに名称を使い始めたらどうなるか。

「オープンソース」という単語だけでは一体それが何のことを示しているのかが分からず、オープンソースという単語には意味がなくなってしまうだろう。

4. 試験そのものはオープンでない

LIP-Japanの成井氏は次のようなことを述べている。

LPI-Japanが、オープンソースデータベース技術者認定試験を開始 - クラウド Watch

同じくオープンソースベースのデータベースソフトであるMySQLについて成井 弦理事長は、「現在はOracleの配下に入っており、ディストリビューションのリリース時期や仕様を1つの企業が決めるようになるとしたら、OSSとは違うものになる。今後、中立な立場でディストリビューションされるようであればMySQLもやるかもしれない」とコメントした。

もし仮に成井氏のいうような「中立な立場」とやらが重要なものだと仮定しよう。であれば、オープンソースデータベース技術者認定試験も中立な立場を取るべきである。なぜPostgreSQLに肩入れするのか。PostgreSQLしか扱っていないものをオープンソースと称するのは中立ではない。

他者に中立性を求める一方で、自分は中立性をないがしろにするという姿勢はいかがだろうか。フェアだと言えるだろうか。

5. 変更は簡単ではない

先ほど引用したコメントには「今後、中立な立場でディストリビューションされるようであればMySQLもやるかもしれない」とあったが、そうは言っても将来的に他のRDBMSを追加するというのはそれほど易しいことではないと思う。

もし仮に、将来他のオープンソースなRDBMSを対象とした問題を試験に追加したとしよう。その時認定試験の名前は同じで良いのだろうか?同じ名前の認定資格なのに、合格者のスキルセットは異なっても良いのだろうか?

試験にバージョン番号をつけたらどうだろうか?しかしそれではどの種類のデータベース管理システムを対象としたものかということは一見して分からない。

将来的に同じ名前のものの内容を変えるというのは、コンセプトとして間違っていると思うのである。

まとめ

LPI-JapanどのがPostgreSQL認定試験を実施することは違和感がありつつ100歩譲って見過ごすとしても、試験の名称はやはり黙って見過ごすことは出来ない。PostgreSQLだけしか扱わないのに、「オープンソースデータベース〜」と命名するのは間違っている。名が体を表さないのは混乱を招くだけであるので、受験者のためにも業界のためにもならないので即刻名称を変更して頂きたいと思う。

また、前回も指摘したがLPI-JapanによるOSSに対する認識は明らかに間違っているので、早急にオープンソースに対する認識を改めて頂きたいと思う。

脚注
  1. と筆者は思っている。
  2. 昭和的なのは認識している。
  3. もっと言えばオブジェクトリレーショナルデータベースだ。

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