クールなアポーからファンタスティックなガジェ〜〜ットが登場だぜヒャッハーーーッ!!
というノリで記事を書くべきところだが、残念ながら俺の場合そうはならない。何故ならば、俺はMacユーザーではあるがアップル信者ではないからである。従って割と冷静にiPadに纏わる分析が俺の脳内で錯綜しているので、その辺をダンプしてみようというのが今日の主旨である。ちなみに、俺自身iPadの実機を見たり触ったりしたことがあるわけではなく、あくまでも予想に基づいた記事である点はご了承頂きたい。なお、本稿は少々長文であるのであしからず。
iPadとはナニモノか?
iPadはタブレット型デバイスであるが、タブレットPCではない。タブレットPCと言うとことごとく失敗している感があるので、その印象(もしくはトラウマ)が強く残っている人にとっては、どうせiPadもぱっとしないデバイスでしょ??と思ってしまうだろうが、俺はそうではないと思う。そもそも、俺に言わせてみればタブレットPCは失敗して当たり前だ。PCは元々キーボードとマウスという入力装置を前提に設計されたデバイスであり、それにタブレットの皮を被せたって使いづらいに決まっている。デフォルトのGUIぐらいまでは独自で設計出来るかも知れないが、数多くあるPC向けのソフトウェアはタブレットで使うことを想定していない。従ってタブレットでは快適に使えない!ソフトウェアが快適に使えないPCなんて、翼をもがれた鳥のようなものである。その結果、タブレットPCなど鳴かず飛ばずになって当たり前なのだ。その点、iPadの出発点はiPhone(もしくはiPodタッチ)であり、元々タッチパネルを前提にUIが設計されている。iPhoneは小さいデバイスだが、それを大きくしたところで操作性が劇的に変化(もしくは劣化)することはない。小さいものが大きくなっても困らないのだ!むしろ画面が大きくなって使い易いと感じるに違いない。
つまり、iPadはタブレットPCとは逆方向の発想による産物なのである。
スペックについての所感など。
主なスペックは、- サイズ: 242.8 x 189.7 x 13.4 mm
- 重さ: 0.68kg または 0.73kg(3Gモデル)
- ディスプレイ: 9.56インチ XGA(1024 x 768) IPS液晶
- CPU: 独自設計のA4プロセッサ SoC 1GHz
- ワイヤレス: Wi-Fi (802.11a/b/g/n) / Bluetooth
- センサー類: GPS、加速度、明るさなど。
- バッテリー: 連続使用10時間
感想は人それぞれだろうが、正直なところこのサイズにしては軽くて薄い!現時点ではちょうどいいバランスのチョイスではないだろうか。独自設計のA4プロセッサのスピードは実際どんなものか?と思うけれども、アップルのページにあるデモムービーを見た限りでは、Webブラウジングや画面の遷移、動画再生などがサクサク動いていてスペック的には充分そうである。(俺の見立てでは、3GHzのCPUを搭載したWindows Vistaマシンより快適にWebが見られそうだw)
何が出来て誰が使うのか?
Appleのホームページの説明によると、iPadは以下のことが出来るということになっている。- ウェブ
- メール
- 写真の閲覧と管理
- ビデオ再生(YouTube含む)
- 音楽の再生と購入
- PIM機能(スケジュールや連絡先の管理)
- 本の購入と閲覧
- App Storeから購入したアプリの実行(ゲームとか)
そんなわけで、iPadの客層はプライベートユースがメインであると睨んでいる。iPadはPCほど操作は難しくなさそうなので、特に普段PCを使わない人には最適だろう。
仕事には使えないの?
ごく一部の先鋭的なノマドピープルなら「もうワープロも表計算も必要ないね!」と言うかも知れないが、現時点では99%のサラリーマン(もしくはOL)にとってそれらのツールは必須なので、iPadで仕事が出来る人はほとんど居ないんじゃないだろうか。といいつつ俺は普段ワープロも表計算も仕事では殆ど使わないのだが、俺の場合はコンパイラやデバッガが使えないと仕事にならないので、技術系の人にとっても仕事では使えないだろう。仕事では使えないというのを逆手にとって、仕事ではPC、プライベートではiPadみたいに、ON/OFFをはっきり切り換えるのはいいんじゃないだろうか。
NetBookやUMPCとの違い。
タブレットPCの親戚(?)であるNetBookと比べてはどうか?これはそもそも比較することがナンセンスであると感じるかも知れない。なぜなら、NetBookは単に安い!速い!軽い!という特徴を持ったPCだからだ。(UMPCの場合、残念なことに「遅い!使いづらい!高い!」といった特徴がオマケでついてくる場合があるが・・・)iPadはPCではないので、この比較はあまり意味がないだろうという理屈だ。しかしながら、「プライベートでちょこっとWeb見たりYouTube観たりしたいヮ」というニーズがある人にとっては、NetBookとiPadは「出来ること」の領域が被ってるのでガチバトルになると予想される。
iPod/iPhoneとの違い。
iPadはポケットに入れて持ち歩くこと出来ないので、そういうニーズの人とは噛み合わない。よって潜在的な顧客をiPadとiPodが奪い合うというのはあまり考えられない。用途が違うので、両方とも所有するのも意外とアリなんじゃないかと思う。BluetoothがあればiPadも電話機に使えなくもないと思うのだが、iPadに電話アプリが搭載されていないのは意図的だと思う。(FLASHが搭載されてないのは意図的じゃないと思うけど。)iPadのダメなところ?
GIGAZINEの記事で早速ダメ出しが行われている。詳細は記事を読んで貰うとして、項目だけを引用すると、- 大きすぎる
- マルチタスクじゃない
- カメラ非搭載
- タッチキーボード
- HDMI端子無し
- iPadという名前(がダメ)
- Adobe Flash非対応
- アダプター(の不足)
機能が足りない。それはそれは結構なことだと思う。全部入りが欲しい人はPCを使えばいいだけだし、何かの機能を無くす代わりに「別の使い方が出来る何か」が欲しい人だけが、この手の新しいデバイスに手を出せばいいし、案外そういう人は多いのでヒット商品が生まれることもある。で、iPadが発表されて真っ先に俺が思い出したのがポメラ。文章を入力することに特化したお茶目なヤツだ。ポメラの発売元であるキングジムの社長、宮本氏のインタビュー記事が印象深い。以下、抜粋である。
「10人の消費者全員が『まあまあ欲しい』と言う商品Aと、10人中9人は『要らない』と拒否するが1人は『絶対に欲しい』と熱望する商品Bがあった場合、どちらの商品がヒットの確率が高いと思いますか」と宮本社長は言う。
これは凄く重要なことで、言い方を変えると「ターゲットを絞ってスイートスポットに商品をぶち込め!」ってことだと思う。そんなわけで、今言われているiPadの欠点はマイナスには作用しないだろうというのが俺の見立てである。つまり、機能が無いのは欠点ではなく長所!なのである。
間違いなく破壊的。
iPadは、ローエンドからミッドレンジに切り込む製品であり、間違いなく「破壊的技術」のひとつであると思う。NetBookも破壊的だが、アレは単に安いだけなので、基本的にはPCとコンセプトが同じだ。そういう意味では、iPadのほうが破壊的なのである。破壊的って何?という人は、クレイトン・クリステンセン氏の名著「イノベーションのジレンマ」を読むといいだろう。iPadは間違いなくローエンドからPCに切り込む存在となるだろう。
これまでiPadには弱点がないか?とも思えるようなことを主体で書いてきたが、そろそろ苦言を呈する時間がやってきたようである。
iBook
アップルは今回新たに「iBook」というコンセプトで、iTMSを通じた書籍の販売を大々的に打ち出している。が、俺はXGAの解像度で本を読むのはちょっと厳しいんじゃないか?と思う。英語圏ではアルファベットが主体なので文字が見にくいということはないだろうが、漢字圏では小さい字は読みづらい。また、iBookアプリは筋が悪い。デモムービーを観るとページめくりのエフェクトが作り込まれているのが分かるが、紙の本のいいところはページをパラパラめくって自分の目的のページを素早く発見できることなので、エフェクトは正直言って無意味である。
ページめくりエフェクトなんて飾りです。偉い人にはそれが分からんのです!
DRM!! It's iBad!!
iPad最大の問題にして最大の欠点は、DRM技術が使われていることである。DRM、Digital Right Managementとは、平たくいうとコピーガードだ。ユーザーが購入したデータを、他人が勝手にコピー出来ないようにする仕組みで、著作権保護の目的で使われていると「言われている」。「DRMの何が悪いの?勝手にコピーするのが悪いんじゃないの?」と思われるかも知れない。確かに違法コピーはよくないのだが、DRMの問題は自分でデータをコピーすることも出来ないというところにある。世の中で使われているDRM技術の基本的なコンセプトは、「音楽や動画、テキストなどのデータを専用のハードウェアまたはソフトウェアでしか再生・閲覧出来ないようにする」というものである。つまり、例え自分がお金を出して購入したデータであっても、自由に自分の好きなプレイヤーで再生することが出来ないのだ!そんな理不尽なことがあるだろうか。つまりDRMとはユーザーの自由を束縛する仕組みに他ならないのだ。
アップルは現在、iTMSを通じてDRMフリーの楽曲も販売するようになっているが、まだまだDRMフリーのものを提供しているレーベルは限られている。DRMつきのものもについては、5回まで他のPCへコピーが可能(コピーした後にアップルの認証を受けるフェアプレイという仕組み)となっているが、基本的にはアップルが提供しているハードウェアやソフトウェアでしか再生出来ない。まさにクソッタレ!!
iPadのDRMはiBookにも適用されているので、iPad用の書籍データはアップル以外のデバイスで観ることは出来ないだろう。フリーソフトウェア財団でも、iPadのDRMに対して「iPad is iBad for freedom」と題して苦言を呈している。iPadのDRMに抗議するための署名もあるので是非どうぞ。
データ容量。
映画とかを購入しまくったら、一番安いモデルの16GBはもちろん、最上位モデルの64GBすらあっという間に使い切ってしまうだろう。容量はちょっと足りないと言わざるを得ない。MacやPCを母艦にして、そっちに保存しておけばいいと言うかも知れないが、それではiPadの使い勝手が損なわれてしまうだろう。この点は残念でならない。苦言終わり。
PIMにはイイかも。
スケジュールを管理したりメモを取ったり連絡先を調べたり、常に持ち歩いてそういったタスクをこなすにはiPadは最適かも知れない。PDAや携帯電話では小さすぎて入力が面倒だし、パソコンは重いし起動が遅いし、というわけでこれまではPIM用途にジャストフィットするデバイスがなかった。(と個人的には思うのだが、ま、感じ方は人それぞれだからiPhoneでOK!!という人も結構多いかも知れない。)iPadはWebで調べ物も出来るし、メールで連絡も出来る。プライベートや外出時はiPad、でオフィスで机に向かって仕事するときはPC、という使い方が割と良さそうに思う。
価格戦略。
$499〜を高いと思うか安いと思うか?iPhone 3GSがリベートを適用すればタダ同然で手に入れられたり、NetBookがたたき売られたりしている現状では、$499〜(3Gモデルは$629〜)というのはちょっと高価すぎると思う。Kindleやスマートフォンと比べると高くはないのだが、しかし、アップルはハードウェアで儲けるのではなくiTMSを通じたメディア販売(DRMという問題はあるものの)で儲ける方向にシフトしてきているのだから、プレイヤーの価格を下げてメディアを購買する客層の裾野を広げるべきではないだろうか。「熱狂的なファンがiPadを買って利益をアップルに献上してくれるだろう」という目論見があるのかも知れないが、それではユーザーの裾野は広がならない。(そもそもファンに頼りすぎである。)ユーザーの裾野が広がらないとメディアの販売は伸びない。とはいえ、タダでiPadをばらまくワケにもいかない(そんなことをしたら大赤字になる!)だろうから、バランスが大事である。
任天堂やソニーがゲーム機本体価格を抑えるように、iPadももう少し価格を抑えた方が良かったんじゃないか。iPadもゲーム機だし。その代わりiTMSでがっぽがっぽ。(DRM的にはiTMSは嫌いだが、アップルの置かれた立場を考えれば、ビジネス的にはこういう帰結になるかな。)
iPadのライバル達。
一件、ヒジョ〜〜〜〜〜〜にユニークで他のデバイスと被らなそうに見えるiPadだが、領域がオーバーラップしている(もしくは今後被ることになるだろう)デバイスがいくつか存在する。- Amazon Kindle...価格帯、大きさ、そして電子書籍機能というライバルの筆頭。iPadのような派手さはないが、既にアマゾンによる書籍販売の実績もあるし、iBookは苦戦する可能性大。
- Android...iPhone OSを使ったタブレットがアリなら、Androidを使ったタブレットもアリだ。Androidもタッチ画面を前提に作られているし、使い勝手で大きく引き離されることはないだろう。それに、iTMSでの書籍販売がアリなら、Android Marketでの販売もアリである。まさにガチバトル。
- SnapDragon/TEGRA...ガジェットでの勝負ではないが、プロセッサ的な意味でのライバル。iPadのA4プロセッサは優秀そうだが、他のライバル達も引けを取らない。この前発売されたGoogleのNexus Oneや、もうすぐ発売されるSony EricssonのXperiaは、SnapDragonを搭載しているが、こちらもA4と同じ1GHzである。SnapDragonはスゲー速い。また、思わずTENGAに空目してしまうことの多いTEGRAだが、こちらはnVidiaの力作であり、期待がかかる。インテルも黙ってはいないだろう。
- Chrome OS...iPadは破壊的だが、さらに上を行くのがChrome OS。なにせ全てのデータはWeb上に蓄えるのだから、iPadのように大容量のディスクを搭載する必要もない。ネットが必須という「クセ」があるものの、ネット環境は日々改善しつつあるので、Chrome OSが正式リリースされる頃には準備は整ってることだろう。Chrome OSはiPadを破壊できるか?!
- NetBook...なんだかんだ言って、安くてオールインワンの便利な存在。SoCやSSDを使ってもっと軽量化・低価格化すれば、こっちの方がイイという人も増えるはず。問題はOS。Windowsじゃ冴えないなあ。やっぱりここはひとつLinuxに期待したい。Ubuntu++。
- PSP/Nintendo DS...スマートフォンが進化して大きくなるなら、携帯ゲーム機に新たな機能を追加するのもアリだろう。「iPadと同じサイズのPSP。タイトルは全てダウンロード専用。PIM機能もあります。」みたいなのがあれば欲しい!!
まとめと分析。
いくつか苦言を呈したものの、基本的にiPadは素晴らしいガジェットであると思うので、ヒットするんじゃないかと思う。もしかすると、タブレット型デバイスにおける史上初めてのヒット作という栄冠を手にするかも知れない。ただし用途は限られてるので、iPhoneのような爆発的な大ヒットにはならないだろう。もしアップルがもう少し低価格でiPadを出せれば、iPhoneと同じかそれ以上のヒットになる可能性もある。そういう意味では、3Gモデルはキャリアのリベートを絡めるべきである。iPodはこれを期にフェードアウトするのではないだろうか。名前も似てて紛らわしいし。iPadは先駆者としてのスタートを切ることになるだろうが、手強いライバルが存在するので熾烈な争いを繰り広げることになると予想される。競争は市場を活性化させるので、iPadを皮切りにタブレットの新時代が到来するかも知れないなあと予測したところで、このエントリを締めくくることにする。
以上、お粗末様でした!!長文エントリ読んでくれてありがとう!!
3 コメント:
> 仕事で使えな…
うり?iWork(MSOfficeの各ドキュメント形式と互換性あるOfficeソフト)のiPad版でますよ?
あと、iPhoneOSって実はメーラーでxls ppt doc pdfみたいなファイル開けたり、シートの編集位ならできちゃったりします。
http://www.apple.com/jp/ipad/specs/
mswarさん、
おっしゃるとおりiWorkがありましたね。すっかり脳内でスルーしていました。しかも価格は$9.99とお買い得。iWorkは相当売れるんじゃないかと思います。が、それでもiPadは従来型の日本企業では採用されないんじゃないかなあ。フリーランスで仕事してる人には凄くいいと思いますが、日本企業の体質には合わないかと。(情報漏洩対策とか厳しいですし。)
■Apple、9.7型タブレット「iPad」を発表 - 電子書籍用ショップ「iBookstore」も―あとはWi-Fiのインフラが整ってくれればベストなのだが?
http://yutakarlson.blogspot.com/2010/01/apple97ipad-ibookstorewi-fi.html
こんにちは。アップルのiPad素晴らしいと思います。カメラがついていないことなど、iPhoneとのすみわけを考えているのだと思います。それに、スプレッドシートなどすぐにアプリが出来てしまうと思います。MS陣営からも、すでに「スレートPC」がでていますから、これから、この分野どんどん伸びていきますね。確かに、アプリケーションの開発を大掛かりにやるのでなければ、一般の人ならこれで十分ですね。あとは、コンテンツが充実してくれば、かなりいけますね。しかし、ここで、他の先進国にはない日本特有の問題がネックになると思います。そうです。通信環境の悪さです。キャリアも高すぎますし、WiFiも普及していません。特にWiFiに関しては日本は相当遅れています。通信インフラに関しては、民間だけで頑張っていてもなかなか解決しません。やはり、行政も何とか工夫してもらいたいと思いませんか?詳細は、是非私のブログを御覧になってください。
コメントを投稿