ちょっと硬派なコンピュータフリークのBlogです。

カスタム検索

2009-01-26

スケーリングと多様性

ゾウの時間 ネズミの時間というベストセラーになった本がある。この本が出版されたのはかなり前なのだがとても興味深く、単細胞生物からほ乳類に至るまでの種々の生物において、なぜそれらが大きくなれないのか・または大きくなれたのかを説明している。(生物にとって、サイズが大きいのは生存競争に勝ち抜く上で非常に重要なことである。)コンピュータエンジニアとしてこの本を読むと、コンピュータと生物の類似性に気づかせてくれる。そして様々な考察を与えてくれるのである。

なぜシステムがスケールしないのか・またはスケールするのか・さらに進化したシステムとはどのような形態になるべきなのか・・・


細胞のサイズは10ミクロン(0.01ミリ)までしか大きくならない。これは、細胞内部の組織が常に核(DNA)の情報を必要とするからである。細胞が大きいと核からの情報=RNAが届かない箇所が発生してしまう。細胞内では常にRNAが作られ、RNAからタンパク質が作られ、そのタンパク質が一定の速度で分解され・・・というサイクルを繰り返しているので、RNAが届かないと組織の活動を維持できなくなってしまう。RNAはDNAを部分的に複写したものであるが、DNAは一つしかないのでRNAの生産量には限りがある。従って、細胞はあまり大きくなることができないのである。つまり、生物の細胞においては

垂直方向へのスケールアップには限界がある。

一方で、ヒラムシという動物に関する考察も面白い。ヒラムシとは平べったい動物で、プラナリアのような原始的なものなのだが、その名前が示すとおり平べったい形をしている。なぜ平べったいのかというと、循環器がないからで、循環器がないと必然的に体内に酸素を運ぶのを物質が拡散するスピードに頼らなくてはならず、拡散のスピードは距離の二乗に反比例するのであまり大きいと中心までの距離が長いので隅々まで酸素が届かない。ヒラムシは、この問題を平べったくなることによって解決したのである。

つまり、水平方向にスケーリングしたのである。

しかし、この戦略では限界が自ずと見えてくる。なぜなら、横方向に平べったい形では、運動性能に限界があるからだ。なので、ヒラムシは5cm程度までしか大きくなることができない。さらに大きくなるにはどうするべきだろうか。それには、仕組みを変える必要がある。即ち循環器というイノベーションが必要なのである。つまり、

イノベーションがスケールの限界を打ち破る。

というわけである。

つづく・・・

0 コメント:

コメントを投稿