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2014-05-16

自由でオープンなウェブ終了のお知らせか?またはそれを守るために我々は何をするべきか。

先日、MozillaがブラウザにEMEを採用することを発表してしまった。Mozillaには正直言ってがっかりだ。以前、DRMがウェブに持ち込まれようとしている未だかつてない危機というエントリで危惧していたことが現実になってしまった。フリーソフトウェア財団も今回のMozillaの発表に対して非難の声明を出している。

EMEがブラウザに搭載されるのは、自由でオープンなウェブにとって危機的な状況であると言える。今日はそのことについて警笛を鳴らしたいと思う。

ウェブは自由でオープンだから発展した

そもそも、ウェブがこれだけ発展したのは、その仕様が自由でオープンだったからだ。現実にはブラウザごとにクセが強すぎるので半ば笑い話にしかならないが、建前上は互換性はあることになっている。そのため、ウェブページはどのブラウザあるいはOSであっても閲覧することができる。中にはサポートしていないブラウザを拒否するようなウェブページも存在するのは確かだが、基本的にHTMLという共通のプラットフォームが存在するというのが、ウェブが発展した理由としては大きいのではないだろうか。

HTMLで記述すれば、他に技術的な制約はない。ウェブは自由でオープンな仕組みだからこそ発展したのだと言える。

ところが、DRMをそこへ持ち込むと、特定のプラグインなどをインストールしたソフトウェアでないと閲覧できないもの(動画や音楽、文章など)が出てきてしまう。そうなるとウェブはオープンなものではなく、一部の企業にコントロールされた不自由なものに成り下がってしまうだろう。

DRMはフリーライド

ウェブを使う人口は膨大で、そこで商売をしたのなら見返りは大きいかも知れない。だからと言って、DRMを持ち込むのは間違っている。DRMは自由でもオープンでもないのだから、そのようなものが持ち込まれればウェブは後退してしまう可能生が高い。

DRMを持ち込もうとする企業は、ウェブの発展に対して何らかの貢献をしたのだろうか。ユーザー数が膨大なまでに成長し、そこに大きなマーケットがあるから、儲かるからと言って自分たちの都合の良いようにルールを変えてしまうのはフェアではない。彼らは言ってみればフリーライダーだ。広く使われているプラットフォームにタダ乗りして利益を得たいだけなのだ。ウェブの発展に対して貢献して来なかったし、これからの発展にも興味がないのだ。だからDRMを持ち込んでも何の良心の呵責もない。

どうしてもDRMのようなものを持ち込みたかったら、ウェブ以外のところでやったらどうかと思う。ブラウザにDRMを組み込むのではなく、DRMのメディアを再生する専用のソフトウェアでも配布したらどうだろうか。DRMは企業が利益のためにユーザーに不自由を強制する邪悪な試みであるが、場外でやる分にはまだ影響は少ない。わざわざ、皆が使う自由でオープンなプラットフォームに乗り込む必要はないのではないか。

ユーザーはDRMのボイコットを

正直なところ、ユーザーはDRMの問題をあまり認識していないように思う。それどころか、今この瞬間便利だから、安いからという理由で、DRMが搭載された機器、あるいはソフトウェアを喜んで利用しているようにすら思える。

DRMの痛みは感じにくい。だからこそ、気づかないうちにDRMが様々なところからあなたの生活に侵入し、最終的にあなたをがんじがらめにしてしまう。その結果ユーザーは使う機器あるいはソフトウェアを制限され、高い料金を払わされ、生活は不自由で不便なものになっていくだろう。最近はDRMつきの電子書籍サービスが終了することに伴って、そのユーザーが悲鳴を上げているのをたまに見かけるが、これは典型的なDRMの被害であると言えよう。

DRMは最初は便利だと感じるかも知れない。だが、最終的にあなたが支払わなければならないコストを大きく押し上げることになるだろう。

Mozillaにひとこと

フリーソフトウェア財団の声明でも言及されているが、Mozillaは非営利の団体なのだから、そこまでユーザー数に固執するべきではないのではないか。冒頭の記事では、「Firefoxユーザーは、制限のかかったビデオを見たいと思うたびに別のウェブブラウザーを使用しなければならず、製品としてのFirefoxの有用性に疑問を投げかけることになる」ということがEMEを組み込む理由として挙がっているが、何の問題があるだろうか。EMEがあろうがなかろうが、ユーザーがたったひとつのブラウザだけを使っているという例は少ないのではないか。特にFirefoxのように、わざわざ後からインストールしなければならないようなブラウザを使っているユーザーであれば尚更である。

余談だが、もしFirefoxのユーザーが減少しているのだとしたら、それはEMEが無いからではなく、ブラウザそのもののデキに満足できてないからではないかと思う。Firefox 29のようにガッカリな方向性へ逃げるのではなく、パフォーマンスと品質をもっと磨くべきではないだろうか。Firefox 29のUIもガッカリだが、EMEにはもっとガッカリだ。

私はこれまでFirefoxブラウザを使ってきたが、その大きな理由としてMozillaのDRMに対する姿勢に好感が持てたというのが大きい。自由でオープンなブラウザを提供しないなら、Mozillaに何の価値があるというのだろう。Firefox 29の出来にもガッカリだし、そろそろ考えなおすべきかも知れない。

フリーソフトウェア財団のメンバーになろう

もし、このエントリを読んで頂いた方の中で、DRMに納得できない、DRMがない(あるいはもっと少ない)世の中になって欲しいという人がいたら、是非フリーソフトウェア財団のアソシエイトメンバーになって欲しいと思う。それがフリーソフトウェア財団を応援する最も手軽で確実な手段だからだ。

もし現時点でDRMを使っている人でもメンバーになるのに躊躇する必要はない。観たい映画の供給元がDRM付きしかないなどの理由で、今はどうしてもDRM付きの機器あるいはソフトウェアがあなたにとって必要なのかも知れない。しかし、もしあなたが「DRMが無いほうがもっと良い」と思うのなら、ぜひフリーソフトウェア財団の活動を支援して欲しいと思う。それがより良い未来、すなわちDRMがない未来へと繋がる道なのだから。

フリーソフトウェア財団のメンバーになるのはこちらのリンクから。年会費は120ドル(学生は60ドル)からとなっている。決して安くはないが、より良い未来を築くための出費として、長い目で見れば価値あるものになるはずだ。

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