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2012-06-24

ダウンロード刑事罰化について考える

先日、あろうことか国会において議員立法でダウンロードの刑事罰化の法案が可決してしまった。これは日本という国の発展にとって由々しき事態である。これはまさに日本の経済の発展にとって非常事態であると言っても過言ではない。しかしながら我々は今現在この日本で暮らしている真っ最中であり、ただ黙って日本が没落していくのを見ていくわけには行かないだろう。そこで、今回はダウンロード刑事罰化について、その問題点と我々が取るべき行動について論じてみようと思う。



これまで見ていたウェブページが見られなくなるか


我々にとって直接的に影響が出ると考えられるのはまずこの点だ。だが待って欲しい。我々はどうやってそのようなコンテンツを避けて通ればいいのだろうか。「このページの閲覧およびコンテンツのダウンロードは違法です」と宣伝しているウェブページがあるだろうか?あるファイルをダウンロードすることが違法だと判別するにはどうすれば良いだろうか?世の中に存在する楽曲は何もJASRACによって著作権が管理されたものだけではない。ミクのように個人が趣味で作曲したものも多数ある。そのようなコンテンツはネットで自由にダウンロード・拡散されることを希望して公開されているものである。ユーザー視点で言えば、公開されているものは無料でダウンロードしても良いと見做すのが一般的だろう。

従って、この点については直ちに影響はないと考えられるが、将来には「公的機関が認定したサイトだけを閲覧しても良い」というようなルールが決められてしまう可能性が考えられる。もしもそのようなルールがまかり通ったりしたら重大な自由の侵害となる。コンテンツは自由に生み出されるから面白いし発展する。鳥かごの中だけでしか生きられないコンテンツに未来はない。

日本にとって本当に必要なのはインターネットかそれとも音楽ビジネスか


ダウンロード刑事罰化が成立した矢先に看過できない事案が発生している。

朝日新聞デジタル:違法音楽ファイルを自動検知 プロバイダーに導入要請 - 音楽 - 映画・音楽・芸能

これは平たくいうと「インターネット上でサーバーを運営している奴らは5万円払ってこのソフトウェアを買って導入・運用せよ」ということだが、これははっきり言って馬鹿げている。ウェブサービスはスモールスタートで始めるのが基本だが、5万円を支払うこと、そして余計なコンピュータリソースを食うソフトウェアを稼働させることでウェブサービス開始の敷居が上がってしまう。このソフトウェアが強制されたら、まず間違いなく個人が管理・運営しているようなウェブサービスは駆逐されるだろう。小さくてマイナーなサービスが日々生まれることは、ウェブサービスの発展にとっては欠かせない。それらは全て種だ。種をまかなければ芽は出ない。

彼らは自らの音楽ビジネスの利益を守るために、日本のインターネットの将来を奪ったのだ。

上記のニュースで扱われているソフトウェアが強制されなくても、日本ではDropboxのようなクラウド上でファイルを管理するようなサービスが成長する可能性は無くなった。これは重大な機会損失である。音楽ビジネスを守るためにウェブサービスの可能性が摘み取られようとしていることに、我々は大声で異を唱えなければならない。

JASRACが如何に手段を選ばないかはJASRAC vs DESAFINADOの例を見ても明らかである。この国にはもはや正義というものは存在しない。問題に気づいたひとりひとりが一丸となって声を上げるしかないのである。

なぜダウンロード刑事罰化は民意を完全に無視して可決されるに至ったのか


なぜネットだけは“特別扱い”なのか 違法ダウンロード刑罰化を巡る非常識|岸博幸のクリエイティブ国富論|ダイヤモンド・オンライン

ダウンロード刑事罰化の中心で活躍されているこの「岸教授」はAvexの取締役であり、かつ経産省からの天下りである。

今回の件で天下りを受け入れれば自社に(だけ)有利な法律を作ってもらえるという構図が浮き彫りになったが、これは到底受け入れがたい社会悪である。腐敗と言って差し支えないだろう。金で法律を買われないようにするためにも、この点は厳しく追及するべきである。今回のような悲劇を繰り返さないようにするため、我々国民は天下り防止への要望をもっと声を大にして訴えて行かなければならない。

DRMフリーな生活


さて、これ以降は我々が今回の法改正を受けてどのような行動を取れば良いのかについて論じてみようと思う。(このエントリのように純粋に「どうすれば刑事罰の対処にならないか」という内容だけを綴っているのではなく、筆者の想いや考えも含めてどうやって状況を変えていくかということについて論じている点はご了承頂きたい。)

今回の法律では、暗号化を施されたDVDやゲームソフトのリッピングやコピーが違法と見なされるようになった。このような暗号化(もどき)によってコピーを防止する技術をDRMという。DRMという利便性を大きく損なう仕組みが付加されていないメディアやファイルを利用していれば、違法行為とは見なされることはないだろう。どのように我々はDRMを避けて通れば良いのだろうか?それには、Defective by DesignのDRM-free guideが参考になる。

DRM-free guide @ Defective by Design

とりあえず、楽曲はAmazon MP3 Storeで買うといいだろう。AmazonのMP3はDRMフリーなのでプライベートな複製は全く問題がない。iTunesでもiTunes Plusを利用すればDRMフリーなものを購入することが出来る。多少高くてもiTunes Plusを選択するべきだろう。

また、楽曲を楽しむならばMagnatuneというサイトがおすすめだ。Magnatuneはサイト上で直接ストリーミングで聴くことができる。なんと無料で。そして気に入ったらダウンロードして下さいという方式らしい。ダウンロードをするには有料会員になる必要がある。ひとつき15USD。240USD払うと生涯会員になれて一生聴き放題らしい。Magnatuneは次のエントリで詳しく説明されているのでぜひ参照して欲しい。

Magnatune(マグナチューン)と言う名の音楽配信サイト - 武蔵野日和下駄

まずはMagnatuneにアクセスしてみよう。「play hifi」というリンクをクリックすると再生が始まる。英語だけのサイトだし流行りものの音楽は入手することはできないが、純粋に音楽が好きで未知の音楽を発掘したいという人には良いかも知れない。日本のミュージシャンには一銭も還元されないが、インターネットの将来を摘みとるクソったれなエコシステムに金を払うよりもよっぽどマシだ。日本のミュージシャン、特にミク系の人たちならMagnatuneへ楽曲を提供する側になってみてはどうだろうか。Magnatuneからの売り上げも期待出来る。

一方、映像作品(Blue-RayやDVD)に関してはやや絶望的にならざるを得ない。市販されているDVDはほぼ例外なくCSSによる暗号化がなされているからだ。中にはもしかするとCSSによる暗号化がされていないものがあるかも知れないので、もしそのような作品ないしは供給元があれば教えて欲しい。(DVDのパッケージを見ると「複製不能」という表示がある。これはCSSによる暗号化を意味するものだろう。手持ちのDVDを調べたところ、ひとつを除いて全てこの表示があった。なかったのは保坂のぶと氏の「八ッ場ダムはなぜ止まらないのか」だけであった。ちなみに、リージョンコードはCSSとセットになっているので、リージョンの指定があるDVDソフトは例外なくCSSによる暗号化が行われている。リージョンオールないしはリージョンフリーのものならば、CSSが適用されていない可能性があるかも知れない。)

今、まさにユーザーにとって望まれるのは暗号化されていないDVDソフトではないかと思う。そこで、供給元に提唱したいのは、過去の作品を暗号化無しのフォーマットでリメイクするというビジネスモデルである。利便性を追求したいユーザーには、私的な複製が自由なメディアはきっと需要がある。ぜひDVDソフトの権利を持っている業者の方は、今回の改正をビジネスチャンスだと捉え、CSSによる暗号化がされていないものを市販して頂きたいと思う。本ブログを見て暗号化されていないDVDソフトの販売をした人が居たらぜひ連絡をして欲しい。本ブログでもれなく宣伝させていただこうと思う。日本での販売が許可されているものであれば作品の内容はどのようなものでも構わない。

不買運動


自分たちの利益のために国民の生活を振り返らない連中には金銭を供与すべきではない。従って我々国民は(今回の法改正に納得行かないなら特に)もうこれ以上CDやBlue-Ray、DVDを購入するべきではない。音楽や映画が無くても生きていける!!インターネットの将来が危ぶまれるぐらいなら音楽や映画を我慢したほうがよっぽどマシだ。どうしても映像に飢えているならYouTubeやニコニコ動画がある。

というわけで、消費者として、インターネットのユーザーとして意思を表示する最も良い方法はCDやDVDを買わないことである。出来ることなら(例えそれがDRMフリーであっても)ダウンロード購入も避けるべきである。

中古市場を漁ろう


そうは言ってもどうしても楽曲や映像作品を楽しみたいという場合には中古品を購入するのが良い。そうすれば支払う金額も少なくて済むし、JASRACやレコード会社への金銭供与を最小限に留めることが出来る。CDやDVDは過去の作品でも十分に満足できる。音質や映像の劣化がないからだ。これを言ってしまっては元も子もないかも知れないが、今持っている作品で満足しているなら新たに作品を購入する必要はない。つまらない作品を、話題に乗っかるためだけに購入する必要はないのである。

もしあなたがファンで、アーティストへ少しでも還元したいと願うならば、コンサートや映画館へ足を運ぶべきだろう。

TVを観ない習慣を


TVは映画や映画や新曲の宣伝で溢れている。TVを観るとそういった宣伝により興味をそそられることもあるだろう。これはとても危険なことだ。出来ることならTVを捨ててしまおう。そうすればNHKの料金も払う必要がなくなって一石二鳥だ。

TVがなくても生きていける。情報が必要ならインターネットを活用すれば良い。インターネットにはデマも蔓延しているが、メディアの偏向報道だって似たようなものだ。

TVを観ない生活は素晴らしい。その分他の有意義なことに時間を割くことができるからだ。趣味をしてもよし!勉強をしてもよし!友人と遊んでもよし!どれもTVをダラダラ観て過ごすよりずっといい。あなたがTVを観て過ごしている時間を他のことに使えばもっと充実した人生になるかも知れない。あなたが最も多く余暇を費やした行為が「TVを観る」で果たして良いのだろうか?

外堀を埋める


日本の制度や法律は往々にしてアメリカの後追いをする。従って、アメリカにおいてDRMに反対する組織を支援することには意義がある。その結果アメリカでDRMに反対する声が強くなれば、日本も影響を受けるからだ。DRMに反対する組織といえば、やはりFree Software Foundation(通称FSF)である。

Donate to the FSF

寄付の金額がデフォルトで100USDに設定されているが、もっと少額でも構わない。寄付するということが大事なのだ。また、寄付は一度だけでなく定期的に行うことが望ましい。となれば、FSFのメンバーになったほうが賢い選択かも知れない。FSFのメンバーシップは月々10USDからだ。(つまり年間120USD)

Join FSF

500USD以上支払ってFSF Contributing Memberになると、Thank GNUのページに名前が掲載される。臨時収入があった場合などはぜひFSF Contributing Memberになろう。Thank GNUには日本人の名前もたくさん見つかるぞ。

ちなみに、先程紹介したDRM-free guideを展開しているDefective by DesignはFSFのキャンペーンサイトである。FSFほど、DRM反対に長けている組織は他にない。FSFが社会により認知され、その主張が認められるようになれば、その影響は日本にも届くだろう。

もっと直接的に抗議活動を行う団体が良ければ、ネットの検閲等に激しく抗議するDemand Progressに寄付するのもいいだろう。

Demand Progress

こちらも寄付を受け付けているし、彼らの主張にはもれなくツイッターボタンやFacebookのシェアボタンがついてくる。それらを共有するだけでも抗議活動に協力することが出来るだろう。

著作権は何のためにあるのか。


最後に、著作権の意義について皆さんに考えて頂きたい。著作権は何故必要なのかということだ。

如何なる法律も社会にとってプラスになると考えられているため存在する。著作権もそれは例外ではなく、著作権によって人々に何かプラスになることがあるから権利として認められているのだ。プラスになることとは、より多くの芸術・音楽作品を楽しめるようにするためだ。視点を変えるとより多くの人に芸術・音楽作品を行き渡らせるためと言えるだろうか。著作権を認め、その対価を得られるようにすることで創作活動を支援する。それによってより多くの作品が生み出されて、社会の一人ひとりが作品をより多く楽しめるようになるというのが重要なポイントだ。著作権は特定の企業のために存在するのではない。あくまでも民衆のために存在する。文明を後退させるならば著作権の存在意義はないのである。

我々は、文明を後退させようとする利権者団体に対して、明確にNo!をつきつけなければならない。なぜこのような制限を課すことは文化の後退につながるかという問いに対して理論武装しなければならない。そのためにとても良い書籍がある。



この書籍(以下フリーカルチャー本)は、クリエイティブ・コモンズを中心とした内容であるが、著作権そのものの成り立ちから、インターネット全盛の今作品にどのようなライセンスが必要なのかということについて様々な角度から論じた良書である。説明もとても分かりやすい。今回の法改正により、我々は必然的に「あるデジタル作品はどのような利用が許可されているのか?」ということを意識せざるを得なくなった。つまりライセンスに対して敏感になる必要があるのである。とりわけインターネットで視聴できる作品に対するライセンスは、自分の身を守るためにも意識する必要があるだろう。(本ブログでもこれまでクリエイティブ・コモンズについては何度か取り上げてきたのでそちらも参照して頂きたい。)

奇しくも、この素晴らしいフリーカルチャー本が出版された直後に著作権法が歴史的な改悪をされてしまうという結果になった。今後更なる改悪が行われないようにするには、我々ひとりひとりが「何故著作権を強めてはいけないのか」ということについて理解し、語っていかなければならない。フリーカルチャー本がひとりでも多くの人の手に届くことを願って止まない。

著作権法は残念な方向に進んでしまったが、未来はまだ変えられる!!強欲で自己の利益しか顧みない利権者に対して、強く声を上げていこうではないか!!ひとりひとりが立ち上がらなければこの国の未来はないのだ!!

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