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2010-01-20

語り尽くされたことを改めてブログに書くことの意義。その2

前のエントリでは「なぜありふれた技術に関する記事を改めて書かなければいけないのか?」ということについて、次の4つの観点から語ってみた。
  • 大事なことはより多くの人の目に止まるようにしなければならない。
  • ひとつの技術を別の角度から描くことで、様々な視点で見る機会をもってもらう。
  • 情報を加工することで、新たな価値を創出することができる。
  • 発信するという行為は自らの糧となる。
今日は別の角度から「既に多方面で語られていることを改めて書く」ことの意義について、さらに語って見ようと思う。

その技術を理解している人がどれだけ居るのか。

そもそもであるが、SQLインジェクションについて理解している人がどれだけ居るだろうか?SQLインジェクションがどのような仕組みなのかということについては、データベースを使って開発をする全てのエンジニアが嗜むべき知識であるが、その事についてちゃんと理解している人がどれだけ居るのだろうか?最前線でWeb開発をしている人なら、結構な割合でSQLインジェクションについて正しく理解していて、なおかつ対策についても心得ているかも知れない。しかし100%の人が心得ているわけではない。多めに見積もっても50%程度ではないだろうか。ではWebだけではなく、ITのエンジニア全体ではどうだろう?セキュリティはITに携わる者にとって興味の対象となり得るはずであるが、SQLインジェクションは特にWeb開発で必要な知識なので、正しく理解している人の割合はもっと低いはずだ。多く見積もってもITエンジニア全体の5%も居ないのではないか?意味のない例えだが、日本人全体ではどうだろう?恐らく、理解している人の割合は0.1%未満になるだろう。(ただしこれらの数字は感覚的なものであって根拠なしなので注意。)

「そんな知識は誰でも知ってて当たり前」と思うか「知らない人の方が多いんじゃないか?」と思うかは自由だが、俺は後者の予想をしたわけであり、多くの方にはてブをつけて頂いたことを考えると、あながち予想は外れてなかったんじゃあないかと思うわけである。大抵のことは、理解している人の割合よりも理解していない人の割合の方が圧倒的に多いのだ。従って、「いまさら書くなよ」的な意見は、実はあまり気にしなくてもいい。

それでも新人はやってくる。

少子化や、景気の低迷によって新卒の就職率が下がっているが、それでも新人が皆無になるということはない。新人が皆無になったら日本は終わりである。社会人だけでなく、学生たちも新たな知識を求めてネットの記事を読みあさっていることだろう。従って、例え本当にまったく同じことであっても、特定の情報(例えば「SQLインジェクション」について)の需要が無くなることはない。

書店の学生向け参考書の棚を見てみるといい。世代によってカバーする内容に多少のぶれはあるものの、毎年同じような内容の書籍が並んでいる。もちろんその内容やわかりやすさは年々向上しているに違いないが、基本的には(現在の科学技術や歴史を根底から覆すような発見がなければ)内容の大筋が変わることはない。それでも売れ続けているのは何故か?毎年新たな学生が誕生しているからだ。

話は飛躍するが、聖書について考えて見て欲しい。キリストが誕生してから2000年以上も経っているが、それでもまだ売れ続けているベストセラーである。(厳密には聖書を編集したのは教会の人だから、2000年間売れ続けているわけではないが。)自分たちにとっては既に知っている知識や常識であっても、後輩たちには需要があるのだ。

新人でなくても新たな知識は必要。

貴方はコンピュータについて、どれだけのことを知っているだろうか?俺は、1%の領域も理解していないと断言出来る。目の前で使っているコンピュータを見てみよう。そのマシンで動くソフトウェアは、間違いなく数億行に上るソースコードから生成されたものであるはずだ。例えオープンソースのプログラムであったとしても、その膨大なソースコードを完全に理解することが出来る人間など、この世には存在しないだろう。

実装(ソースコード)については全てを知らなくても、共通するアルゴリズムや技術について知ればいいと思うかも知れない。しかし、それでもコンピュータ関連技術は膨大であり、一人で全てをカバーできる技術者などはこの地球上に存在しない。自分がコンピュータについて全てを知っているなんて考えるのはおこがましいし、逆に自分の知識を他人も知っていると思うのは視野が狭いと言える。

コンピュータに携わる者は、日々勉強の連続であると言って良い。学ぶべき分野が無限とも思えるほど存在するからだ。その上、IT業界はドッグイヤーと呼ばれるほど変化が激しい。学ぶべき知識は日々新たに世界のどこかで産み出されているのである。

ブログを書くのを躊躇わないで欲しい。

実はこれが一番主張したかったりするポイントだったりする。「今さらそんなこと書くなよ!」という意見を気にしなくていいと冒頭では述べたが、そうはいうものの、そのような意見はこれからブログなどを書いて情報を発信しようとする人の士気を下げてしまうだろう。そんな意見を言われてしまうと「やっぱりエントリ書くのやめとこうかな」なんて考えてしまう人が居るに違いないのだが、そのようなことがあれば俺は非常に残念極まりないのである。俺自身はそういうことを言われても気にせず新たなエントリのネタにしてしまうわけだが、世の中そういう人ばかりではないだろう。ブログを始めたばっかりの人やこれからブログを書こうという人達ならばなおさらである。

人は誰しも最初は初心者であるし、初心者の経験談というのも、また価値ある情報であったりする。上級者による初心者向けのエントリも価値があるだろう。そのようなエントリを否定するのはナンセンスだと思うのである。もちろん技術的に誤りがあった場合には指摘をすればいいと思うが、エントリの存在を否定すればブログを書こうという人の気を萎縮させ、その結果新人ブロガーが参入する機会を奪ってしまうことになりかねない。それは社会全体にとっての損失である!

想像してみて欲しい。ブログを新たに書き始める人が居なくなった世の中を。権威ある人だけが発言を許された世の中を。情報は極端に偏ってしまうし、そうなればもはやブログに新たな発見を見いだすことは出来なくなってしまうだろう。きっとそんな世の中はツマラナイ。我々はYet Another Bloggerの参入、および彼らによるYet Another Entryを歓迎すべきであり、それを阻害してしまうような行為は慎むべきなのである。

ブログを書こう!

あなたが何かについてとても詳しいならば、その事について少しずつ角度を変えながら何度でも情報を発信するべきである。何かについて学んでいて、それについて新たな発見や驚きがあったなら、その価値ある情報を発信して欲しい。情報に対する需要は存在し続けるので、「そんなありふれた情報などもう必要ないだろう」と思っている人には、「あなたが発信する情報には価値がある!!それを放棄するのはエントリを読んで貰う機会を逸しているのだ!!」ということを指摘したい。

ブログを書こう!みんなで知識を出し合おう!情報の消費者であり、かつ発信者であろう!!そうすれば世の中がもっと楽しくなるはずだから。

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