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2012-10-27

Windows 8が出たのでPCの今後について考えてみた。

Windows 8が発売された。

既存の操作方法とかなり異なるUIを持ったこのOSが果たしてユーザーの支持を得ることができるのか、筆者としては大変興味深い。深夜の発売イベントは相変わらず熱狂的だったようであるが、一般人にまでも広くこの熱が伝わるかどうかが興味の対象である。今日はWindows 8の機能とPCの将来について考察してみようと思う。

これまでのWindowsの優位性を再確認する


人はなぜWindowsを使うのか。数ある理由の中で最も大きなものはWindowsが市場をほぼ独占しているということが挙げられる。その結果としてサードベンダーがWindowsにしか対応しないソフトウェア、ハードウェアを数多くリリースしてきた。「このソフトが使いたい」「デバイスがWindowsにしか対応していない」といったことは本当によくある。実際、人はOSを使いたいのではなく、OS上で動くアプリケーションが使いたいのだが、残念ながら多くのアプリケーションがWindowsにしか対応していないという現実がある。(ちなみに、筆者は幸いにしてWindowsの呪縛から逃れることに成功している。代替アプリは探せばある。)

独占と互換性は表裏一体である。市場を独占しているからWindowsに対応するソフトウェア・ハードウェアが充実するし、その結果またWindowsから逃れられなくなるという循環が起きる。(Wineを使えばWindowsアプリを他のOS上で実行することも可能だが、表示が乱れる、異常終了するといったことが頻繁に起きる。)Windows 8が市場にどれだけ普及するかということを考察する上で、この点を見過ごしてはいけない。多くの人には他にOSの選択肢がないのだ。ただし最近はOSXが躍進し、パワーバランスに変化が生じてきているように見える。市場を独占しているという優位性は絶対的なものではなくなりつつあるのかも知れない。

Windows 8が提案する新しいUI


Windows 8最大の特徴は何と言ってもUIの変化だろう。この変化により、既存のユーザーは新たに操作法を覚える必要があり、最初のうちは変化に戸惑うことになる。これはあまり歓迎できない変化だ。特に年配の方々にとってこの変化はキツイものがあるだろう。

筆者が疑問に思っていることの最大の焦点は、Modernと名付けられた(以前はMetroとして知られていた)このUIを目当てにWindows 8を購入するユーザーがどれだけ居るかということだ。はっきり言って、新しいUIが欲しければ別にWindowsでなくとも良い。タブレット風のUIが欲しければ既に販売されているたくさんの優秀な製品の中から好きなものをチョイスすれば良いではないか。なぜWindowsでなければならないのか。Modern UIである必要性はなにか。もしユーザーに既存のアプリケーションを使うという目的がないのであれば、果たしてModern UIを選ぼうという気になるのだろうか?

Windows 8はまだ発売されたばかりなので結論を出すのはまだ時期尚早だろう。だが、多くの人が考えているように、タブレット風のタッチインターフェイスが欲しいなら先駆者であるiOSやAndroidを選択するのではないだろうか?そもそもModern UIはWindows 8で初登場したわけではなく、Windows Phoneで既に採用されている。Modern UIが良いという人は既にWindows Phoneを使っているはずではないか?Windows Phoneの普及率を考えると、多くの人はそれほどこのUIに魅力を感じているわけではないと考えられる。

また、Windows 8では古いUIの代表格であるスタートメニューが削除されている。半ば強制的にModern UIを使わざるを得なくなっているのだが、それは問題だという風に考えている人々も多いようで、Windows 7以前の使い勝手を取り戻すソフト特集というものが既に存在している。

キーボードショートカットを使えば便利だという声もあるがこの意見には同意できない。一般人が如何にマウスだけでPCを操作しようとするか。キーボードは便利だ。そんなことは分かっている。だがわざわざキーボードに手を置くということが面倒だと感じる人はたくさん居るのだ。特にブラインドタッチが得意ではない人にとってその傾向は顕著だ。誰もがPCのエキスパートではないのである。多くの人が「Windows8入れたのにタッチパネルにならない!」と思ってしまうのである。ショートカットを使え!という提案が彼らに受け入れられることはないだろう。

果たしてこの新しいUIはマイクロソフトにとって正解だったのだろうか。

Windows 8のメリット:軽量化


Windows 7が何故売れたのかを思い出して欲しい。最大の理由はひとつ前のバージョンであるVistaと比べて軽量化されたということであろう。OSにとって如何に快適に使えるかということは至上命題である。もっさりした動作のOSにはうんざりしてしまうものである。

その点、Windows 8には改善が見られるようだ。Windows 7のユーザーがどれだけWindows 8に乗り換るかはこの点にかかっていると思う。Modern UIは一般的な(ギークではない)Windows 7ユーザーの心には届かないだろう。Modern UIは遅いという声もあるようなので、軽量化を期待しているのでればなおのこと、Moder UIは避けたくなるだろう。

悪夢のセキュアブート


Windows 8はBIOSではなくUEFIを搭載したPC上で実行されることが推奨されており、マイクロソフトはWindows 8対応のロゴを得るためにはセキュアブートに対応しなければならないとしている。

セキュアブートとは電子署名を利用して、マイクロソフトが署名済みのOS以外を起動できないようにする仕組みだ。FSFのホワイトペーパー(英語)を読めば分かるが、セキュアブートはその名前が示すようにセキュリティを向上させるどころか、セキュリティの脅威になりうることが分かる。セキュアブートの問題点については改めて記事を書こうと思う。

今はただベンダーがセキュアブートを無効化できないような製品を出さないよう願うばかりである。

価格について


Windows 7に比べると、Windows 8はかなり安い。Windows 7搭載PCを買えばWindows 8へ1200円でアップグレードできるというキャンペーンや、ダウンロード版が3300円といった今までには考えられないような低価格である。なぜこのような価格設定がなされたのだろうか?マイクロソフトはどのような戦略に基づいてこのような価格設定にしたのだろうか?それにはいくつかの可能性があると思う。

ひとつは、「価格を下げなければWindows 8は受け入れられない」とマイクロソフトが考えているという可能性だ。Windows 7はひとつ前のバージョンのOSであるWindows Vistaよりも高速に動作するというのが売りであり、それが功を奏してシェアを伸ばしてきたように思う。UIの変更のようにユーザーにとって大きなストレスとなるチャレンジは特にしなかったので、放っておいても売れるのが分かっており、そのため強気の価格設定で押してきた。しかしWindows 8はかなりチャレンジャーなOSである。大衆に受け入れられるかは未知数であるが、受け入れられない場合にはマイクロソフトの経営にも大きく響いてくる。いったん利益は度外視して、新しいUIを受け入れてもらおうという狙いがあるのではないだろうか。

もうひとつは、マイクロソフトがOS本体ではもはや儲からないと考えている可能性があるということだ。アップルが展開しているApp Storeのように、Windows 8ではWindows ストアが利用可能になる。本体ではなく、ストアによって収益を上げるというビジネスモデルへと転換しようという狙であれば、ストアから収益を上げるために本体を広く普及させる必要がある。そのためOS本体は低価格に据え置いたのではないか。

中の人ではないので真相は分からないが、UIの大幅変更といい、低価格設定といい、マイクロソフトの内部で大きな戦略の転換について議論されてきたのは想像に難くない。(例え中の人でも社運のかかっている戦略について不用意に語ることはできないだろう。)

新しい市場


アップルのティム・クックCEOが「マイクロソフト Surface は妥協した曖昧な製品」と酷評しているそうだ。これは真っ当な批判のように思える。新しいUIを搭載してしまったためにデスクトップOSとしては不自然であるし、既存と同じようなデスクトップ環境があるせいでタブレットにもなり切れないでいる。デスクトップOSとしての使い勝手については、おそらくマイクロソフトはそう遠くないうちに方針転換を迫られることになるだろうと予測しているが、もし改善があったとしてもWindows 8には異なる性質のUIが混在することになる。

その事について考えたとき、まっさきに思い出したのはUbuntu for Androidだ。AndroidにUbuntuを搭載することで、普段は携帯電話(スマホ)として、そして必要に応じてデスクトップにもなるという寸法だ。実はUbuntuだけはなく、Motrolaも既にWebtopという機能でAndroidを二刀流のスタイルにするという取り組みを行なっている。UbuntuやMotorolaはスマホにデスクトップの機能を持たせる努力をしており、Windows 8はその真逆の方向でUIを拡張してきていると言える。出発点は異なるが、両者が目指す場所はもしかすると同じかも知れない。

Windows 8は統一感がなく不恰好なOSであり、既存のOSから乗り換えるメリットは少ないが、二刀流のスタイルという新しい市場を開く可能性は大いにあると予想している。

新たな時代の幕開け


今は猫も杓子もデスクワークでPCを使う時代だ。PCなくして今と同等の生産性は実現できないだろう。個人でもみんなPCを持っているのが当たり前だ。

しかしその一方で、タブレットが急速に市場を伸ばしており、タブレット上で様々なことが出来るようになった。分野によってはPCでなくても良い、タブレットで十分といったことも増えてきているように思う。特にパーソナルユースではその傾向が顕著なように思う。タブレットは新製品が続々と登場して盛り上がっており、普及が進めばさらにPCへの依存度は下がってくるだろう。だからどうしてもタブレットの市場に食い込みたい。そういう思いがマイクロソフトにはあるのだろう。

果たしてタブレット市場へ舵を切ることは、マイクロソフトの経営にとって正しい判断なのだろうか。タブレット分野ではマイクロソフトは他社の後を追う形になっている。そもそも単にタブレットを使いたいだけであれば、Windowsとの互換性は問題にならないので、Windowsに拘る必要はない。そのため純粋にタブレット用のOSを開発するよりも、既存の圧倒的多数のWindowsユーザーを囲い込もうとするのは一見すると正しい戦略のように思える。

だが、マイクロソフト自らがタブレットへと舵を切ったということは、デスクトップOS全盛時代の終焉を予感せざるを得ない。マイクロソフトは現在デスクトップOSにおいて王者として君臨しているが、その栄光の時代の幕引きへの引き金を自ら引いてしまったのではないだろうか。タブレット市場ではデスクトップOSの圧倒的シェアによる優位性、すなわちWindowsとの互換性という切り札はもはや使えない。Windowsのユーザーベースを利用したとしても、既に先駆者が成功を収めているタブレット市場はマイクロソフトにとってはこれまでに経験したことのない厳しい戦場になるだろう。

Modern UIはもしかすると、マイクロソフトにとって空けてはいけないパンドラの箱だったのかも知れない。

2 コメント:

内山太志 さんのコメント...

酷いですね。
早くパソコンメーカーとショップには
Windowsは入れるべきOSでなく、
GNU/Linuxこそが入れるべきOSであることを
認知して欲しいです。

Mikiya Okuno さんのコメント...

私はベンダーがプリインストールなしのPCを販売するようになってほしいです。

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