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2010-12-24

入魂レビュー:保坂のぶとの現場レポート 八ッ場ダムはなぜ止まらないのか

今日はコンピュータとは無縁の話なので、興味が無い読者の方はスルーして頂きたい。

社民党前衆議院議員である保坂のぶと氏が、先月入魂の「八ツ場ダムはなぜ止まらないのか」というドキュメンタリーDVDを制作・出版された。このDVDはアマゾンで現在購入することが出来る。値段は2100円、時間は40分ほどだ。ここのところあまりトップニュースに上ることがない八ツ場ダム関連事業であるが、国民がこれをこのまま放置していては絶対にいけない!!ということを痛烈に実感させてくれるDVDであった。このDVD一枚だけで、八ツ場ダム関連事業の胡散臭さ、そして行政が如何に信頼に足らない存在なのかということが理解できる。

このDVDは必見過ぎるので是非皆さんにも購入して頂きたいのだが、八ツ場ダムの現状を皆さんに知ってもらいたく、DVDの概要を紹介しつつ作品をレビューしようと思う。その前に、まずはこのDVDを制作された保坂のぶと氏に感謝の気持ちを表したい。ありがとう!!

止らないダム関連工事

八ツ場ダムの一番の問題点と言えるのがここではないだろうか。DVDのタイトルは「八ツ場ダムはなぜ止まらないのか」というものだが、これを聞いた人の中には「はぁ?ダムの工事は止まってるんでしょ?何言ってんの!?」と思う人が居るかも知れない。なぜなら民主党は「川辺川ダム、八ツ場ダムの建設中止」をマニフェストで謳い2009年の第45回衆議院議員総選挙で圧勝し、鳩山政権では前原国土交通大臣も中止を明言していたからだ。だからもう止まってるんじゃないかと。

確かにダム本体の工事は止まっている。だが、ダム関連工事は相変わらず粛々と続けられているのだ!!

大きな問題点は2つある。ひとつは本来ダムがあってこそ初めて役に立つ関連工事、つまりダムが出来ることによって必要となる迂回道路や橋が建設されているということだ。ダムを造るかどうかという結論が出ないままに。そしてもうひとつの問題点は、ダム本体の工事費は事業費全体のたった9%に過ぎないこいうことだ!!

止めると言った事業。確かにダム本体の工事は止まっているかも知れないが、予算の大部分を占める関連工事は一切変わらず続けられている。ダムがなければ不必要なものに、結論がないまま巨額の税金が投入されているのだ。詐欺ではないかっ!!我々国民はこれを怒らずしてどうしようかっ!!

さらに現政権では馬淵国交相が八ツ場ダム建設中止方針を撤回している。一体我々国民は何を信じれば良いというのだろう。

八ツ場ダムを建設すべきでない3つの理由

DVDでは、八ツ場ダム建設における問題点を指摘している。どれも報道ではあまり取り上げられなものばかりだが、どれも反対するのに説得力十分である。

ひとつ目は浅間山噴火の問題である。浅間山は活火山であり、700年に一度大噴火が起きると言われている。八ツ場ダムは火口からおよそ20kmほどしか離れていないところにある。1783年に起きた天明の大噴火では、高さ50m、時速72kmの泥流が八ツ場周辺を襲ったそうだ。途方もない脅威である。そもそもそんな大噴火が起きたらどうするんだという議論は別途する必要があるだろうが、ダム建設後に噴火があった場合どのような危険に繋がるかということがまったく検討されていないというのだ。越流や決壊の危険性はないのだろうか?

ふたつ目は地すべりの問題だ。八ツ場周辺は非常に地盤が脆く、ダム建設によって地すべりが起きると言われている。地盤が脆いのは、その周辺が浅間山が崩れて流れてきた土砂が堆積して出来たものだからだ。岩盤ではなく堆積した土砂なのだ。脆くて当然である。その影響は既に工事にも現れている。本当はまっすぐに通す予定だった道路が、地すべりが発生したため土砂により塞がれてしまい、迂回する形で工事が進められたところもあるのだ!


このことを聞いただけでも危険を感じることだろう。だが、それよりも怖いのはダムが完成した後のことである。土砂が堆積して出来た地盤が水を吸うとどうなるか想像してみて欲しい。地盤はさらに緩むことは間違いない。大規模な地すべりによる事故が起きないことを願うばかりである。

そしてみっつ目の問題は水質である。八ツ場ダムで利用される吾妻川の支流である湯川は、草津温泉から強酸性の水が流れこみ、生物が住むことが出来ない河川であった。河川の有効利用のため酸性の水質を中和しているのだが、この公共事業にはなんと年間10億円もの税金が投入されている。その手法は一日60トンもの石灰を用いるというものであり、当然ながら湯川の水は白く濁ってしまうことになるし、多くの土砂を流すことになってしまう。そのため、下流にある品木ダムで土砂を塞き止め、土砂を掻きだして「土捨て場」と呼ばれるところに廃棄しているそうだ。

ここでもうひとつ問題がある。その土砂には高濃度のヒ素が含まれているのだ!元々湯川には上流にある鉱山跡からヒ素が流出するという問題があり、そのヒ素が品木ダムによって塞き止められ、さらにそれが土捨て場に運ばれるという事態になっている。高濃度のヒ素を含む危険な廃棄物処理場であるにも関わらず、土捨て場はただ穴を掘っただけのものである。当然ながら雨が降ったらヒ素が流れ出ることになってしまう!そんな水質で大丈夫か?と思うだろうが、土捨て場は品木ダムより少し高い場所にあるので、土捨て場から流れ出たヒ素は品木ダムで塞き止められることになる。そして延々と品木ダムと土捨て場を循環するので実害はないというのが国の言い分なのだそうだ。本当に大丈夫なのだろうか。

そもそもが不要という話

八ツ場ダムを建設すべきではない理由も紹介されているが、それ以前にもっと根本的な「建設すべきではない」理由がある。不要なのだ!

多くの有識者が治水・利水の面から見ても八ツ場ダムは必要ないということを指摘している。人にとって実利がない。即ち不必要なのである!なぜ必要ないものなのに国民、特に有識者の声に耳が傾けられず、多額の税金を投入して公共事業は進んでしまうのか。どうして行政を止めることは出来ないのか。しかもダム本体は一端中止が明言されたにも関わらずである。民主党は「事業仕分け」という派手なパフォーマンスを行なったが、なぜ中止を明言したダム関連工事が仕分けされなかったのか!!科学技術関連の予算は容赦なく削られたが、なぜ科学技術振興よりもダム関連工事の方が大事なのかか!!憤慨やる方なしとはこのことである。

余談だが、国民や有識者の声に耳を傾けず暴走する行政の姿は、表現規制条例を制定した都の姿勢とダブって見える。行政とはそういうものなのだろうか?だとしたら、行政改革の必要性が、未だかつてなく高まっている気がしてならない。

ダム建設という名の自然破壊

言うまでもないが、ダムを建設することによって多くの地域が水没してしまう。自然が豊かな土地であり、木々が生い茂り、野生生物が数多く生息する。自然の損失は即ち我々人類の共通財産の損失であると言える。工事や観光事業など、一時の利益を追求して、共有財産である自然を失わせることは本当に正しいのだろうか。将来自分たちの身に災が跳ね返ってこないだろうか。

いや、影響は既に至るところに出ている。例えば熊が人里に出没するというようなことが起きているが、熊がそのような行動に出るのは餌が不足しているからだと言われている。なぜ山に餌がないか?それは山が人の手によって狭められ、あるいは好き勝手に植林され、餌の元となる広葉樹が不足しているからである。八ツ場ダムの建設も群馬県周辺の生態系に少なからず影響を及ぼすことだろう。

熊が人里に下りて来ると大抵の場合は射殺することになる。人に危害が及ばないようにするため、射殺は仕方がない措置なのであるが、それを良しと思わない団体があるようだ。もちろん熊が射殺されることを悲しく思う気持ちは理解できるのだが、その団体がどんぐりを山奥に運ぶなどするといった行動をとって問題となっているのだ。どんぐりなどによる餌付けは百害あって一利なしなので止めていただきたいものだ。そんな活動にエネルギーを注ぐぐらいなら、熊の生息地をこれ以上失わないためにも、ダム建設中止を訴えるべきである。そのほうがずっとずっと熊のためになるのだから!

最大の被害者=住民

八ツ場ダムの事業計画が発表されたのは、なんと1952年、既に半世紀以上前である。当然ながら当時、地元住民は計画に大反発した。だが、長い長い戦いの末つかれ果て、ダムを容認したという経緯がある。容認したのはダムが出来た後にダムを利用した地域再建プラン(観光などが軸)があるからだが、ダムが中止になってしまえばその計画は白紙に戻ることになってしまう。そのため、現在は八ツ場周辺にはダムを望む声も多いようだ。そして、現在は確実に八ツ場周辺は寂れてしまっている。

水没予定地域には、全国的に名高い川原湯温泉街が含まれる。温泉街は活気を失い、旅館は次々に店仕舞いを余儀なくされてしまっているのだ。ダメージを受けているのは旅館だけではない。多くの人が八ツ場を離れたそうである。国の事業に振り回された結果なのである。DVDではそのへんの様子が詳しく紹介されている。当然国から金銭的な補助は貰っているのだろうが、それでは彼らの幸せは取り戻せないだろう。正直、見ていて気の毒になった。

住民にとって必要なのは生活再建プランであってダムではない。もちろんダム工事でもない。極端な話、生活再建の目処が一切なくても、住民全員の生活費を払ったほうがダム建設および保守費よりも遥かに安くつくのではないか。

ダム推進派の顔ぶれ

一方で、ダムが建設されなくなると困る人たちというのは一体何者だろうか。



既に述べたが、八ツ場ダムは治水・利水の面から見ても必要ない。しかも周辺の都道府県には「ダムを観光地にしたい」という思惑もないだろう。何故揃いも揃って不要なダム建設を推進するのか!!

その理由を邪推すると怒りで夜も眠れない。俺は一体何のために税金を払っているんだ!?

まとめ:買うべし!

以上、「八ツ場ダムはなぜ止まらないのか」を紹介してきたが、このDVDは非常に内容が濃い。レビューで紹介し切れなかった話もあるので、続きはぜひ皆さん自身の目で確認して頂きたい。日本国民として、見るべき価値のあるDVDである。


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