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2009-11-02

GPLソフトウェアのパッチをBSDライセンスで提供することの意義

先日の投稿「GPLが適用されているソフトウェア=MySQLのパッチをBSDライセンスでリリースする。では、GPLが適用されているソフトウェアにBSDライセンスのパッチを提供することが出来るということを書いた。ただし、それが出来ることによってどのような意義があるのかということについては触れていなかった。その結果、
単独で動かないパッチに元のと違うライセンスをつける感覚がよくわからない。
という疑問が生じたらしい(ブコメ参照)ので、パッチをBSDライセンスで提供するということはどういうことなのかを説明しようと思う。

まず第一に、パッチ自身はBSDライセンスなので、BSDライセンスに従う限り他のプログラムへ流用することが出来る。
パッチといえども、それが何かの機能を追加する類のものであれば巨大なプログラムになり得るだろう。事実、Googleが提供するMySQLのパッチもかなりデカイ。パッチの規模がでかくなれば、独立して機能する有益なロジックが多々含まれることになるだろう。パッチのライセンスがBSDライセンスであれば、その機能をGPL以外のライセンスのソフトウェア、例えばBSDライセンスのPostgreSQLなどに追加するということも可能である。つまり、パッチをBSDライセンスにすることで、MySQLとPostgreSQLに同じ機能を追加するということが出来るわけだ。

第二に、
MySQLはデュアルライセンスなので、BSDライセンスで提供されたパッチであればGPL版とコマーシャルライセンス版の両方に機能を追加することが出来る。従って、BSDライセンスのパッチはMySQLにとっては都合が良いのである。(MySQLがデュアルライセンスを貫く以上、GPLで提供されたパッチは適用出来ないのである。)

ちなみに、GPLソフトウェアであるMySQL 6.0からforkしたDrizzleも、
全てのContributionはBSDライセンスのもとに行われている。(Drizzleに提供された全てのソースコードはBSDライセンスが適用されている。)従って、Drizzleに追加された全ての機能は、GPL版、コマーシャルライセンス版のいずれのMySQLにも取り込むことが出来るのである。また、DrizzleにContributeされたコードは、PostgreSQLなどの他のライセンスのRDBMSソフトウェアにも取り込むことが出来るので、PostgreSQLerの人は是非Drizzleのソースコードを覗いて見ると良いのではないだろうか。ただし、Drizzleでは積極的に外部のライブラリを取り込んで利用しようという方針があるので、外部のGPLが適用されたライブラリに依存した機能については、BSDライセンスによる利用は出来ない点には注意が必要である。(もちろん元のMySQL 6.0から残っているコードはPostgreSQLに取り込むことは出来ないので注意しよう。)

さて、ここまで書くと「GPLよりBSDライセンスの方が優れている」ということを言い出す人が居るかも知れないので、この点について少し捕捉しておく。
GPLとBSDライセンスを比較するのはハッキリ言って無意味である。確かにBSDライセンスの方が再利用出来るソフトウェアの範囲が広い。(商用、無償、プロプラエタリ、OSSを問わず利用可能である。)しかし一方で、GPLはソフトウェアの利用者に(それをカスタマイズすることを含めて)未来永劫最大限の自由を約束するライセンスであり、GPLを継承することによって再利用可能な場面が限定されることは、その自由を約束するために必要な措置なのである。つまり、GPLとBSDライセンスはそれぞれ異なる属性を持ったライセンス(かたやCopyleft、かたやPermissive)であり、それぞれのライセンスを適切に使い分けるのが重要だということである。ライセンスに対する理解とそれらの使い分けは、オープンソースに生きる人々にとっては最も重要な嗜みと言えるだろう。

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