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2016-10-24

リカンベントは危険な乗り物なのか?

先日、漫画家の方がリカンベント自転車を運転中に亡くなるという事故があった。まずは亡くなった方のご冥福をお祈りしたい。リカンベントでなおかつ漫画家の方の事故という組み合わせは、非常に珍しく、センセーショナルな内容だと思う。この事故を受けて、根拠もなくリカンベントが危険だという印象を持つ方が多数いらっしゃるようなので、警鐘を鳴らしておくことにする。

リカンベントは危険であるともないとも言えない

まず最初に私の立場を明確にしておく。私は数年前からリカンベントに乗ることを趣味にしているので、ある程度リカンベントに慣れ親しんでいる。

どのような乗り物についても言えることだが、一件の事故や、見た目の印象をもって危険であるかどうかを判断することは、ただの主観であって何の根拠もない。危険性を科学的に正しく評価するには、例えば少なくとも次のようなことを考慮する必要があるだろう。

  1. 事故の発生件数とリカンベントの所有台数の比率
  2. 単位距離(例えば1万Km)あたりの事故件数
  3. 単位時間(例えば1万時間)あたりの事故件数

一つ目の統計では、かなり大雑把な統計値しか得られない点は注意して欲しい。本当に危険性を測定するには、様々な車種の自転車乗りからランダムに十分な数の調査対象者を選び、なおかつサンプルとなる人に協力してもらって距離や運行時間などを計測する機器を装着し、車種ごとに単位距離あるいは単位時間あたりの事故件数を測定するといった手法が必要になる。現時点ではそのような調査結果は存在せず、どのような統計データも得られていないわけだから、個人的にはリカンベントは危険であるとも無いとも言えないというのが私の見解である。統計的に危険性が証明されていない以上、どのような議論も虚しいだけだ。それでも「リカンベントは危険だ」と言い張る人も居るのだが、その人の印象以外にどんな根拠があるというのだろうか。想像や印象だけで危険だと言われても、「はいそうですか」と納得することはできないので、その点は悪しからずご了承いただきたいところである。

どんな乗り物でも事故は起きる

1件の事故から、あたかもその乗り物が危険だというような結論を導くのは誤りである。なぜなら、どのような乗り物であっても事故は起き得るからである。電車だって脱線するし、飛行機だって落ちるし、船だって沈む。皆さんはそういった乗り物の事故のニュースを耳にしたことがあるだろう。電車ではJR福知山線脱線事故で107名もの方が亡くなったが、その事故をもって「電車は危険だから運行を禁止すべき」という結論に至っても良いだろうか?事故の件数で言えば、リカンベントよりも通常の自転車のほうが圧倒的に多いし、件数で言えばママチャリがダントツで事故を起こしているだろう。死亡率でいえばバイクが最も危険性が高い乗り物であるし、死亡事故件数で言えば自動車が最も危険であると言える。そういった事実を無視して、印象だけでリカンベントが危険であると結論づけてしまうのは、何の根拠もなく、思考のジャンプであって、反知性的である。

どのような乗り物であっても、安全に運転するにはその乗り物に合った方法で、安全に注意して運転しなければならないというだけのことである。自動車とバイクで注意すべきポイントが違うのと同じように、アップライトの自転車とリカンベントでは注意すべきポイントが異なるのである。そして、どれだけ注意しても事故をゼロにすることは不可能である。個人としてできることは、最大限安全に気をつけて運転することだけである。

そういうわけで、リカンベントに乗車中に事故が起きる可能性はある。危険はゼロではない。だから危険な乗り物ではないとは言い切れない。だが、それは他のあらゆる乗り物にも言えることであり、リカンベントが突出して危険だという確たる統計データはない。なので、リカンベントだけを目の敵にするのは間違っている。

安全装備は大事

読売新聞のニュースによると、亡くなった方はヘルメットを被っていなかったそうだ。どのようなタイプのものであれ、ヘルメットは頭部を守るために重要な装備である。もしこの方がヘルメットを被っていたならば、怪我をしたとしても、死亡するを免れた可能性はゼロではない。もちろん、ヘルメットを被っていれば完璧に頭部を保護できるというわけではないので、かぶっていても死ぬときは死ぬわけだが、ヘルメットを被ることで死亡する確率が1/4に下がるという分析結果もある。(これも厳密には、ヘルメットをかぶっている場合とそうでない場合の人のサンプルを長期にわたってモニタリングしないと、統計的な有意性は示せないだろう。ちなみに、交通事故で死ぬ確率から言うと、歩行者が一番危ないらしいので、公道の歩行は禁止すべきだろう・・・というのは冗談である。)なので、どのような自転車でもヘルメットを被るべきである。

他の安全装置としては、ブレーキの着用はやはり重要である。リカンベント型の自転車も、アップライトの自転車と同様のブレーキが着用可能であり、制動距離も同等であり、大きな違いはない。急ブレーキがかけられるよう、日々ブレーキのメンテナンスはきっちり行っておきたい。

また、当然ながら夜間のためのライトも使用可能であり、夜間の視認性にも差異はない。夜間の視認性はライトの明るさ次第なので、明るいLEDタイプのものをチョイスしたいところである。

後方視界に関しては、振り向くという動作が取りづらいため確かに問題である。そのため、リカンベントにはバックミラーを装着するのがスタンダードになっていると言って良い。私もバックミラーを装着しているので、後方から何か接近していることは、昼間であれば視認可能である。後方にはライトがないのでミラーで視認できないが、ライトを点灯した自動車などが近づいてくるのは分かる。

スピードは怖い

どのような乗り物でも言えることだが、スピードの出しすぎはやはり怖い。衝突したときの衝撃は、スピードの二乗に比例するわけであるし、コーナリング時には遠心力が増すことになり、コントロールを失う原因になってしまう。JR福知山線脱線事故でもそうであったように、電車でさえスピードの出しすぎで事故が起きるのである。当然、他の乗り物でもそれは起きる。リカンベント然り、普通のアップライトの自転車然り、自動車然り、バイク然り。スピードの出しすぎには気をつけるべきである。

ところで、YouTubeに都内でかなり速度を出してリカンベントを運転している動画をアップされている方が居るのだが、私はあのような乗り方には反対である。市街地では特にどこから何が飛び出してくるか分からないので、何時でも急停車できる程度の速度を維持すべきではないだろうか。

件の動画を例に挙げて、鬼の首を取ったかのように「ほら、リカンベント乗りは危険じゃないか!」みたいな言い方をする人が居るのだが、暴走するような乗り方をする人が居るのは、何もリカンベントに限った話ではない。自動車やバイクだって良識のある運転者やライダーが居る一方で、暴走族も居る。これもまた、ひとつのサンプルをもってリカンベントライダー全員が暴走族であるような印象を持つ行為であり、それは誤りである。ロードバイクやママチャリだって、色んなライダーが居るではないか。

まとめ

確かに今回リカンベントで死亡事故が起きたのだが、リカンベントが危険であるという科学的なエビデンスは一切ない。事故が起きるのはどのような乗り物でもあり得ることであり、リカンベントだけを叩くのは間違っている。それぞれの乗り物に合わせた運転をし、安全に最大限注意して、快適な乗り物ライフを満喫したいものである。

2 コメント:

Masahiko Tambara さんのコメント...

現状、リカンベントは自転車より危険な・・・というか、リスクの高い乗り物であると思う。なぜなら、多くの歩行者やドライバーはリカンベントが何かを知らず、自分の近くにそのような謎の乗り物が接近していることを想定できないからである。この様な現状に対してリカンベントのリスクを下げるにあたり、啓蒙や教育が必要なことは言うまでも無いが、もっとも効果の高いことはリカンベントがありふれた乗り物になることである。というわけで、リカンベントは危険なので、みんなどんどんリカンベントに乗ろう!

ちなみに私も実際に走っているところを見たことはないです。あれに乗ってスーパーに買い物に行ったらどこに駐めたらいいん?

Mikiya Okuno さんのコメント...

そういう意味では、日本でもオランダ並みに認知されて欲しいなとは思うよ。快適な(特に腰や股間への負担が少ないという意味で)乗り物には間違いないので、普及すれば多くのメリットがあるように思う。

ちなみに、スーパーには乗って行ったことが無いのでどこへ駐めれば良いかは分からない。自分は主に交通の少ない山岳地帯をうろつくだけなのでね・・・。

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