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2015-05-01

【書評】GWに読みたいリレーショナル・データベースの入門書2冊

今日は最近出たリレーショナルデータベースの入門書を2冊紹介しよう。献本御礼!!

おうちで学べるデータベースのきほん


まずはミックさんと木村さんによる「おうちで学べるデータベースのきほん」だ。「おうちで学べる」シリーズのものだが、とても充実した内容のリレーショナルデータベースの入門書となっている。これからデータベースを本気で始めようと考えている超初心者の人には最適な一冊ではないかと思う。例えば次のような内容は、データベース運用の雰囲気をつかむのに持ってこいである。

  • クライアントサーバーについて
  • 3層アーキテクチャ
  • データベースにまつわるお金の話
  • トランザクション
  • 正規化
  • パフォーマンスの話

無論、これは入門書なので、この本だけを読めば実践でデータベースを使えるようになるというものではない。本書を読破したあと、更に多くの学習や経験が必要になるだろう。データベースの門戸を叩く取っ掛かりとしては、とても良い本のように思う。

ただ、ひとつだけ残念なのは、本書における正規化の解説である。正直なところ、本書の正規化の解説は間違っている。というのも、解説の前提として「テーブル=二次元の表」というレトリックを用いているからだ。初心者に対してRDBのテーブルの概念を理解してもらうには、表として解説したほうがスムーズだというのは分かる。しかし、リレーションは二次元の表ではないし、表という概念のままでは本来のリレーショナルモデルのベースとなっている論理学とは相容れない。論理学に触れなければ、「矛盾を防ぐ」という正規化の目的についても理解できないであろう。

そのような誤った正規化の解説を正すべく、私は「理論から学ぶデータベース実践入門」を書いたので、初心者を抜けて次のステップに進みたいとき、すなわち「リレーション=2次元」の表という理解に疑問を感じたとき、拙著を手にとってほしいと思う。

もうひとつ、本書で物足りなさを感じたのは、アプリケーションからどのように使用するかという解説が無かったことである。そこはあえてカットしたのかも知れないが、実際にはアプリケーションから使わないと、データベースは役に立たない。その利用イメージが、初心者に伝わらないのが非常に惜しいところである。その点は、次に紹介する書籍のほうが詳しい。

できるPRO MySQL


こちらは赤井さんによる、MySQLの入門書「できるPRO MySQL」である。先ほどの書籍はリレーショナル・データベースの解説の題材としてMySQLを用いていたが、こちらはズバリMySQLを対象とした入門書となっている。おなじみの「できるPROシリーズ」のフォーマットで懇切丁寧に解説されているのが特徴だ。

先ほど述べたように、こちらの書籍には、アプリケーションからどのようにしてMySQLへ接続し、クエリを処理するかという解説が含まれている。「おうちで学べるデータベースのきほん」を読んで、次はアプリケーションから使う具体的な方法を知りたいという人は、こちらの書籍へ手を出されてはいかがだろうか。「できるPRO MysQL」では、種々のSQL文の詳しい解説も載っている。初心者向けのSQLの実習として適切であろう。

ちなみに、本書では、次のプラットフォームを使用して、MySQLへ接続するための解説がなされている。

  • Windows
  • IIS
  • PHP

MySQLは確かにLinux上で使用されることが多いのだが、やはり初心者が手元で使用できる環境としては、未だにWindowsが圧倒的である思うので、初心者向けの解説書では、この選択は良いのではないかと思う。そもそも本番でWindowsを利用している現場もあるし、Linuxでなければならないということは全くない。(余談。ライセンス的ににはGPLv2であるLinuxのほうがユーザーにとってメリットがあるのは間違いない。そういえばWindowsがOSSになるかも!という噂が流れているが、果たしてどうなることやら・・・。もし本当にOSS化するならライセンスはGPL、できればv3を強くおすすめする。)

こちらの書籍で一点残念だと思うのは、トランザクションについての解説が無いことである。リレーショナル・データベースといえばトランザクションを使わない選択はないので、初心者は本書を読んだ後にも、もう少し物足りなさを感じるかも知れない。トランザクションについては、「おうちで学べるデータベースのきほん」で解説されているので、本書を読んだ後に「おうちで学べるデータベースのきほん」に手を出してみてはいかがだろうか。

こちらもやはり入門書なので、初心者は本書を読んだ後には、さらに次のステップへ進むべく、他の書籍を読んだり、経験を積む必要があるだろうが、いずれにせよ、取っ掛かりにはちょうど良い本だと思う。

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