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2011-01-27

WebM/VP8には罠がある?いいえ、誤解です。

本田雅一氏がツイッターにて「グーグルVP8の特許問題」と表してかなりとんでもない勘違いをしているようなので指摘しておこう。氏のつぶやきはTogetterにまとめられているので、興味がある人はどうぞ。


ソースコードの参照条件に特許の権利放棄条件を絡めるなど、未だかつて聞いたことがない。オープンソースソフトウェアにおいては特にだ。オープンソースソフトウェアのソースコードを参照するのに特許の権利放棄が条件として課せられていたら大変なことになる。一般公開されているソースコードを見てしまったら「そこの前!ソースコードを見たなッ!じゃあお前の特許は無効だからなッ!」というようなことになってしまうのだから。もちろん、そのようなことは現在の法律では不可能であるが。

WebM(VP8)のライセンス

WebMはVP8とVorbisからなる動画+音声のフォーマットなのは周知の事実である。VP8はもともとOn2 Technologyが開発していた動画フォーマットで、On2がGoogleによって買収されて、WebMの一部としてオープンソースとして公開されている。

WebMにはライセンスが2つある。ひとつはソフトウェア自身の著作権のライセンス、もうひとつはソフトウェアに含まれる特許のライセンスである。ソフトウェアと特許が別々のライセンスで供与されているのが今回の話におけるひとつのポイントである。(著作権法と特許法はまったく別の法律だから、それぞれ別々にライセンスを発行するのは理にかなっている。)

WebMの著作権のライセンスはBSDライセンス(三条項)だ。従って、ソースコードを参照したからと言って、一切の義務は生じない。もちろん、特許の権利放棄なんてこともしなくていい。

では問題は特許ライセンスなのか?そのライセンスはWebMのサイトで公開されている。下記は引用である。

Additional IP Rights Grant (Patents)

"This implementation" means the copyrightable works distributed by Google as part of the WebM Project.

Google hereby grants to you a perpetual, worldwide, non-exclusive, no-charge, royalty-free, irrevocable (except as stated in this section) patent license to make, have made, use, offer to sell, sell, import, transfer, and otherwise run, modify and propagate the contents of this implementation of VP8, where such license applies only to those patent claims, both currently owned by Google and acquired in the future, licensable by Google that are necessarily infringed by this implementation of VP8. This grant does not include claims that would be infringed only as a consequence of further modification of this implementation. If you or your agent or exclusive licensee institute or order or agree to the institution of patent litigation against any entity (including a cross-claim or counterclaim in a lawsuit) alleging that this implementation of VP8 or any code incorporated within this implementation of VP8 constitutes direct or contributory patent infringement, or inducement of patent infringement, then any patent rights granted to you under this License for this implementation of VP8 shall terminate as of the date such litigation is filed.

要約すると「特許のライセンスは無料。製品に含めて販売しても輸出しても何しても構わない。ただし、VP8を特許侵害で訴えると特許のライセンスはなくなるのでヨロシク!」ということだ。VP8を使いつつ、VP8を訴えるという行為はそもそも背反するので、ライセンス提供者側としては当然の要求事項だと言える。

何が罠だというのか


本田氏がいう罠とは何なのか。文脈からするとおそらく次のところだろう。


ふむ。H.264の特許ライセンスを統括するMPEG LAがVP8を訴えると、参加企業はVP8の特許ライセンスも喪失してしまうと。果たして本当にそのようなことが、先程引用した(英文の)特許ライセンスに書いてあるのだろうか?確かにそれらしいことは書いてある。

If you or your agent or exclusive licensee institute or order or agree to the institution of patent litigation against any entity...

「VP8を特許で訴えたらVP8のライセンスを失いますよ」という条項が書かれてあることは先に述べたとおりだが、「誰が」というのを明文化しているのがこのパートである。「誰が」が明確になっていない場合、悪知恵が働く人なら「じゃあ俺が直接VP8を訴えるんじゃなくて誰かに訴えさせてやろう」と考えるだろう。それがまかり通るならそもそも「VP8を特許で訴えたらVP8のライセンスを失いますよ」という条項など無意味である。だから直接的、間接的を問わず、VP8への訴訟を防がなければならない。それは当然の主張なのである。

そこで上記の文面である。訳すと「もしあなた本人、あなたの代理人、排他的にライセンスを発行する機関、もしくはその機関に対して訴訟を起こすように命令または賛同した場合・・・」という感じになるだろうか。

えっ、それってつまり、MPEG LAが訴えてもダメってこと?と本田氏は考えたのではないだろうか。確かにそのようにも読み取れるが、正確ではないと思う。

私は法律家ではないので(IANAL)解釈に責任は持てないのだが、「命令または賛同した場合」と書いてあるので、命令も賛同もしなければおそらくセーフだろう。例えばMPEG LAが独断と偏見で参加企業の意思を振り切ってVP8を特許侵害で訴えた場合などである。この場合、参加企業には何ら責任はないのでライセンス違反にはならない。ただし、訴訟の根拠に使われた特許を自社が持っている場合は、当然MPEG LAが訴訟を起こす場合に「賛同」しなければならなくなるだろう。そこでGoサインを出せばアウトということになる。

他のMPEG LA参加企業が勝手にVP8を訴えた場合などもセーフではないかと思う。ただ、MPEG LAについては詳しく知らないのだが、MPEG LAへの参加条件として「勝手に訴えちゃダメよ」みたいな制約があると話が違ってくるかも知れない。

訴えなければ何も起こらない

VP8を利用したい企業はVP8を訴えない。ただそれだけを徹すれば良い。ただし、直接・間接を問わずである。

VP8がどうであれ、MPEG LAは引き続きH.264をライセンス供与することが可能である。両者は別に関係ないからだ。MPEG LA参加企業は、H.264のライセンス料を間接的に受け取ることが出来るし、VP8を使うことも出来る。特許侵害でVP8を訴えない限りは。

そう、問題はVP8だけである。従ってVP8以外の何か(例えばGoogle ChromeやAndroidに含まれる別の機能など)を特許侵害で訴えるのはライセンス違反にはならない。もちろんVP8以外の動画フォーマット(コーデック)を相手取って訴えることは可能である。

もし、VP8を利用している企業がVP8を特許侵害で訴えたらどうなるだろうか?いきなりVP8が使えなくなるのだろうか?いや、判決が出るまでは何も起こらない。そしておそらくは長い裁判の末、双方が相手の特許に対するライセンス料を支払うことになだろう。VP8を特許で訴えると、訴えた方はVP8の特許を侵害しているということが確定してしまうからだ。膨大な時間と労力が失われ、何の進歩ももたらさない。弁護士が儲かるだけである。特許侵害による訴訟とは何と不毛だろうか。

Googleの意思は明確である。特許による訴訟合戦を回避したいのだ。

VP8はAVCのサブセット?

ちなみに、本田氏の発言には「VP8がAVCの簡易版」とあるが、もしそうであれば、AVCによるVP8の特許侵害は明白である。包含関係を考えてみて欲しい。


もし本当に言葉通りVP8が簡易版ならば、VP8はAVCの「サブセット」になっているはずである。であれば、VP8に含まれる特許はすべてAVCにも該当することになり、AVCによる特許侵害は明白ということになる。(より高機能なほうが、より多くの特許を含んでいる。)だが、このように綺麗な包含関係になっていると考えるのは不自然であり、従って本田氏による「簡易版」という表現は妥当でないと考えられる。

実際のところはどうなのだろうか?筆者はいずれの技術も詳しくないので何とも言えないが、機能的にオーバーラップしている部分は絶対にあるので、双方特許を侵害しあっていることは間違いないと見ているのだが。

Androidとの合わせ技?


「見える」というだけでGoogleにそのような意図があると決め付けるのは早計ではなかろうか。ちなみに、Androidはオープンソースであり、ライセンスはApache License 2.0だ。VP8が問題ならメーカーは自由にVP8を取り除くことが出来る。どこに問題があると言うのだろう?WebM(VP8)がAndroidから切り離せないほど密に組み合わさっており、実質的にAndroidからWebMを取り除くことが出来ないというのなら、まだ本田氏の主張は分かるのだが、残念ながらWebMはコーデックのひとつに過ぎない。

メーカーには選択肢がある。WebM/VP8を使うか使わないかだ。Androidは関係ない。

従って本田氏の主張は、正直なところ「ありもしないシナリオで人々を煽りすぎだ」と思わざるを得ないのが正直なところだ。

そいつぁ関係ねえ!


他の人もツッコミを入れてるが、どう見てもOracleによるAndroid訴訟は、WebM/VP8とは関係のない話である。このような発言まで絡めてしまうとは「坊主憎けりゃ袈裟まで憎い」のだろうか?という印象を受けてしまう。FUDと言われても仕方がないだろう。

パテントプールという存在のおかしさ

ところで、本田氏はパテントプールに対して随分肯定的な意見を述べている印象を受けるが、筆者はパテントプールには真っ向から反対である。理由は「反競争的」だからだ。

特許自体が反競争的であることは以前「<反>知的独占」の書評で述べたが、パテントプールはさらに競争原理に反する存在である。ひとことで言えばパテントプールとは「知的独占の主体」である。

パテントプールには、その名前が示すように、非常に多くの特許が集まる。MPEG LAのH.264では、特許リストの資料(PDF)は70ページにも及ぶ。

特許侵害による訴訟合戦になったとき、どちらが勝つか(つまり損得勘定でプラスになるか)は、特許の数で決まると言って差し支えない。膨大な特許を保有するパテントプールには誰も敵わない。無敵なのである。

するとパテントプールに睨まれた企業はどうなるだろうか。選択肢は2つしかない。

服従か、死か。

通常は(企業として)死を選ぶことはないので、新たにパテントプールのメンバーとして参加することになる。そうやってパテントプールは膨張を続け、さらに無敵になって行くのである。そうして独占が進み、競争がなくなり、技術の進歩が止まってしまうことになる。ごく個人的な意見を言わせてもらうと、パテントプールは法律で禁止すべきである。

本田氏のツイートを見ていると、MPEG LAは訴えたくて仕方がないのかなあ?と感じるのだが、そりゃあ勝てる勝負だ(≒特許数が多い)から訴えたいのだろう。そしてさらに支配力を強めたいのである。ライセンス料が安ければ実質的に誰も文句を言わないかも知れない。だが、ライセンス料を決定するのは、パテントプールであり、いつでも値上げの可能性が待ち構えている。いつでもパテントプールからパテントトロールにクラスチェンジできるのである。

まとめ

本文が長くなったのでひとことだけ。


週刊東洋経済の記事が楽しみであります。

11 件のコメント:

  1. > 膨大な特許を保有するパテントプールには誰も敵わない。無敵なのである。

    なぜパテントプールが必要化ってのの答えがこれで、「製造」しない会社が真に無敵なんですよ。
    で、パテントプールという仕組みはそれに対抗するために作られたものなので、その流れなしに話をするとおかしな方向に。

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  2. naruseさん、

    コメントありがとうございます。

    前半は同意、後半はちょっと納得できないところがあります。

    > なぜパテントプールが必要化ってのの答えがこれで、「製造」しない会社が真に無敵なんですよ。

    製造しない会社が無敵。まさしくそうですね。攻撃されるポイントがないわけですから。

    そもそも「製造しないのが最強」なんていう制度は根本的に間違っていると思ったり思わなかったり。

    > で、パテントプールという仕組みはそれに対抗するために作られたものなので、その流れなしに話をするとおかしな方向に。

    ここがよく分からないのですが、パテントプールがなぜ防御策になるんでしょうか?相手が何も作ってない以上、いくつ特許を持っていようが同じことだと思えるのですが。

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  3. > そもそも「製造しないのが最強」なんていう制度は根本的に間違っていると思ったり思わなかったり。

    そうですね。
    そろそろ特許という制度も寿命かなと思ったりはします。

    > ここがよく分からないのですが、パテントプールがなぜ防御策になるんでしょうか?相手が何も作ってない以上、いくつ特許を持っていようが同じことだと思えるのですが。

    パテントプールの一つの目的に、ライセンスを受ける側の利便性を向上させることでその規格の普及を促すというものがあり、これは広く理解されていると思います。

    で、もう一つの機能に「その規格に関する特許の相場を形成する」というものがあるのですよ。あらかじめ関連特許の相場を作っておくことで、第三者がサブマリン特許なりを持ち出してきて高額の特許請求をしてきた際に、「他の重要特許がこのくらいの値段なのでその請求は高すぎる(権利の濫用である)」という主張が可能になります。ここでのポイントは、「パテントトロールの出現は防げない」「妥当な額での請求は許容する」というところ。まぁ、こういう意味でも、パテントプールは極めて反競争的ですな。

    で、これが機能するには訴訟沙汰になった際にその「相場」が妥当だと認められることが必要になります。およそ妥当とは言えない「0円」を導入されたりとか、そのあげくにVP8がパテントトロールに高額の請求をされて爆死したりすると、MPEG LAにとってとっても迷惑なので、勘弁して下さいと言うのもまぁわからないでもないのです。Googleが知らんがなと言うのもわかりますが。

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  4. はじめまして。

    素朴に疑問に感じたのですが、例えば中国メーカーなどがWebMを使ってMPEGの特許技術をフリーライドするであろうことについては、いかがお考えでしょうか。
    「訴えなければ何も起こらない」というのはその通りなのですが、フリーライドのメーカーが現れても「訴えなければ・・・」というわけにはいかないように思います。

    まぁ、訴えたところで、Googleからの特許ライセンスは終了しますが必ず提訴されるわけではありませんし、Googleから提訴されても別途和解すればよいので、その会社がWebMを搭載した端末を販売していようと悩むことなくフリーライドのメーカーを訴えればよいとは思います。

    ただ、そのような訴訟に打って出ることを萎縮させることでWeb用の動画codecを事実上のパブリックドメインにしよう、というのもGoogleの狙いのひとつではないかなと思います。
    なので、本田氏のおっしゃっていることも、当たらずとも遠からずかなと思うのです。
    (本田氏はライセンス条件を誤解されている部分もあるようですが、取材先の企業が同じように誤解しているということのようなので、それはそれで問題だなぁと思います・・・)

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  5. naruseさん、

    解説ありがとうございます。なるほど、相場を決める役割があるのですね。とてもローカルルール的ではありますが、運用上それは確かに防御になりますね。

    naruseさんも仰ってますが、特許は本当にそろそろ見直した方がいいと思います。反競争的ですし、パテントプールのような存在も特許があるからこそ必要悪なわけで。しかもパテントプールでも「パテントトロールの出現は防げない」と来ますからね。

    <反>知的独占でも触れられていますが、特許制度は不必要悪ですね。特許はイノベーションを増やさないということは歴史が証明していますから。

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  6. ramoramoさん、

    コメントありがとうございます。

    > 素朴に疑問に感じたのですが、例えば中国メーカーなどがWebMを使ってMPEGの特許技術をフリーライドするであろうことについては、いかがお考えでしょうか。

    私は特許制度そのものに反対ですので、そもそも「フリーライド」だと非難することはありません。特許で訴えるという行為は、自社の製品の品質を高めることにこれっぽっちも貢献しません。むしろそちらに労力をとられると本業がおろそかになることすらあります。メーカーは訴訟を熱心に行うのではなく、技術開発にこそ心血を注ぐべきだと思います。

    今日、Webがこれほどまでに発達しているのは、特許とは無縁・・・とまでは行かなくても、あまり縁のない世界だからというのが私の意見です。(アマゾンのワンクリックのような例がありますので、無縁ではありませんが、それでも特許が適用されるのはまれです。)Webで特許が横行するようになったら、Webの進化はそこで止まるでしょう。

    > ただ、そのような訴訟に打って出ることを萎縮させることでWeb用の動画codecを事実上のパブリックドメインにしよう、というのもGoogleの狙いのひとつではないかなと思います。

    パブリックドメインに近いもの、つまり特許によって訴えられないものでないと、Webでは運用が難しくなります。GoogleがWebMをロイヤリティフリーで提供する意図はそこですね。いくら技術的に優れてようとも、ロイヤリティフリーでない時点で、H.264はWebには適さないと言えます。Googleはもし特許侵害で訴えられるようなことがあれば、例え画質が劣化してでも特許を回避するべきでしょう。Webに特許係争を持ち込むことは、Webにとって悲劇でしかありませんから。

    WebMがオープンソース化される前の記事ですが、WebMにどのようなことが期待され、なぜ(私のような一部の人から)H.264が嫌われるかということが解りやすく解説されています。ぜひご一読を。
    http://www.publickey1.jp/blog/10/flashfirefoxyoutubehtml5h264.html

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  7. お返事くださり、ありがとうございます。

    特許制度そのものに反対、というお立場、よく分かります。
    私自身もソフトウェア特許は不要だと思っているので、GIFに対するPNG、MP3に対するOgg Vorbisなどのコミュニティの取り組みに対しては、敬意を払いつつ、応援していたりします。ただ、それらオープンソースコミュニティの活動とGoogleのものは、少し毛色が違うので、要注意だと思っています。

    Googleは(個人的には大好きなのですけど^^)、たとえば、無償で携帯電話のプログラムを提供することで、既存の携帯電話メーカーのアドバンテージやビジネスモデルを破壊し(←既存メーカーの持つ携帯電話のソフトウェア開発資産を無価値なものにされてしまったのですから)、主導権を握りました。通常、そのような目的で無償提供すれば「不当廉売」にあたりそうなものですが、GoogleはOSSを用いることで、そこをうまくかわしていると思います(OSSライセンスで提供することで、誰もが参入できるようになり、むしろ競争が促進される面があるため)。でもこれは、Google自身が、自ら破壊した「端末ソフトの市場」で儲けることは全く考えておらず、検索サービスに誘導できればよいからこそ採れる戦略ということができると思います。

    今回のWebMも、「パテントフリーなcodecを提供する」という一見立派な狙いを隠れ蓑に、OSSライセンスと自社の持つキラーコンテンツをうまく用いて既存の特許権者のアドバンテージを破壊し、市場の主導権を握ろうという意図があるのだろうと思います。もちろん、この戦略は適法だし、実際に無償でcodecがOSSライセンスの下で提供されることも事実なので、Googleが批判される筋合いは全くありませんが、本田氏の言っている「罠がある」というのは、こういう事態に対する警鐘なのかなと思っています。

    ちなみに、OracleとGoogleとの争いも、組込み用JAVA VMの市場の主導権争いという構図で、本質的には同じことが起きていると理解しています。

    以上、拙く長い文章となりましたこと、ご容赦ください。ありがとうございました。

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  8. ramoramoさん、

    戦略的にある種のソフトウェアを無償で配布するということは、業界によく見られることです。例えばアップルのiTunesなどもソフトウェアは無料です。おかげでWinAMPやその他メディアプレイヤーソフトが大きな打撃を受けたかも知れません。

    これまでの歴史でもっともインパクトが大きかったのは、Internet Explorerでしょう。おかげでNetscapeのシェア地に落ちてしまいました。(まあFirefoxになって不死鳥のように蘇ったわけですが。)

    今ではオラクルがMS Officeに代わるソフトウェアとして、OOoの開発を主導してします。(Libre Officeが分岐してしまいましたが。)

    このように無償でソフトウェアを提供できるのは、当然そのソフトウェアによって利益を得なくても構わなく、なおかつそれが自社の利益に、間接的に繋がる企業だけです。

    果たしてそれは責められるべきことなのでしょうか?WebMはフリーソフトウェアであり、GPLv2/v3とも互換のあるライセンスを採用しています。(パテントを含めて。)ソフトウェアをリリースする経緯や、そこへ至る動機・戦略といったものには様々なものがあるでしょう。ですが、「フリーソフトウェアが提供された」という事実はひとつです。私は、その結果を大事にしたいと思います。

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  9. > 果たしてそれは責められるべきことなのでしょうか?

    これは難しい問題だなぁと思います。^^
    実際、ご指摘のように、Internet ExplorerとWindowsの抱き合わせ販売で、公正な競争が阻害されたというようにも考えられますので。今でこそ、FirefoxとしてMozillaが生き返ったからよかったですが、また、ほかにSafari、Opera、Chromeなど選択肢がある状態になっていますのでよかったですが、ひょっとしたら、MSのとった戦略のお陰でブラウザやWebの発展が何年か遅くなったかも知れません(各国で独禁法の観点でMSに対して牽制がかかったことが、その後のブラウザ等の発展の一因になった可能性も否定できないと思います)。なので、責められるべきかどうかは、その戦略をとった会社の市場における地位や実際の市場への影響など、総合的に考える必要があるのではないかと思います。

    ただ、WebMに関しては、現状では先のコメントでも書かせていただいたように「この戦略は適法だし、実際に無償でcodecがOSSライセンスの下で提供されることも事実なので、Googleが批判される筋合いは全くありません」とわたしも考えています。また、確かにユーザーとしては、フリーソフトウェア(OSS)で提供されたというのは大きいですよね。^^

    私個人としても、このGoogle VP8の特許問題については今後の展開に注目していきたいと思います。ありがとうございました&何度も失礼いたしましたm(_ _)m。

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  10. これは限りなくFUDだという自覚であえて書きますが、本田雄一さんは日本のメーカーに対する「愛」によって、冷静な視点で分析していないように見えました。(陰謀論だと「Panasonic担当者から飲み屋で問題視してくれとか頼まれたの?」とか穿った見方になりますが、そこまで露骨な利益供与じゃなくて、個人的な恩義からくる義憤なんだろうなぁと)

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  11. otsuneさん、

    コメントありがとうございます。

    本田さんの真意は分からないので明言は避けますが、もしメーカーへの「愛」からこのような言説をされたのであれば、それは悲しいことですね。今彼らのそういう主張を手助けすることは、メーカーのためにならないので。

    逆に私は、今回のエントリで、メーカーに対して「特許で他のメーカーの足を引っ張るのではなく、自身のプロダクトの品質やデザイン、価格競争力等を改善することに集中してもらいたい」と訴えたいです。足の引っ張りあいをする業界は淘汰されてしまうので。

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