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2010-10-25

書評: 看板に偽りなし!「KVM徹底入門」

仮想化技術が注目されはじめて久しい。クラウドコンピューティングのバックエンドには仮想化が必須であり、ユーザーはあまり意識することはなくてもIaaSなどを利用する場合には仮想化技術のお世話になっている。仮想化技術には実に様々なものがあり、KVM - Kernel-based Virtual Machineはその選択肢のひとつだ。

KVMに興味があり、これから勉強しようと思うのであれば、まずこの本を手にしてみるのがいい。

タイトルに偽りなし!

もくじは以下の通り。徹底してKVMの入門知識を習得するための筋道ができている。
1. KVMと仮想化技術の基礎知識
 1.1 仮想化とは
 1.2 仮想化技術の流れ
 1.3 仮想化のメリットとデメリット
 1.4 IAサーバーと仮想化
 1.5 CPUの仮想化支援機能
 1.6 KVM(Kernel-based Virtual Machine)
2. パッケージによるKVMの導入
 2.1 導入のための準備
 2.2 Fedoraのインストール
 2.3 Ubuntuのインストール
 2.4 KVMパッケージのインストール
 2.5 簡単な動作確認
3. 仮想マシンの作成
 3.1 仮想マシン導入の基礎知識
 3.2 GUI(virt-manager)による方法
 3.3 コマンドラインツール(virt-install)による方法
 3.4 KVM/QEMUエミュレータによる方法
4. 仮想マシンの基本操作
 4.1 仮想マシンのライフサイクル
 4.2 virt-managerによる基本操作
 4.3 virt-managerの応用
 4.4 virshによる基本操作
 4.5 仮想マシンの設定ファイル
5. リソース制御と管理
 5.1 KVMのリソース管理機能
 5.2 CPU
 5.3 メモリ
 5.4 ストレージ
 5.5 ネットワーク
6. KVMのマイグレーション機能
 6.1 ライブマイグレーションの概念
 6.2 ライブマイグレーションのパラメータ
 6.3 ライブマイグレーションのしくみ
 6.4 virt-managerによる操作
 6.5 virshによる操作
7. コマンドラインによる操作(libvirtとvirsh)
 7.1 libvirt
 7.2 livirtによる仮想マシンの制御
 7.3 libvirtの応用的なプログラミング
 7.4 対話型コマンドインターフェイスvirsh
8. QEMU入門
 8.1 QEMUとは
 8.2 QEMUの歴史
 8.3 QEMUのCPUエミュレーション
 8.4 QEMUの2つのエミュレーション
 8.5 QEMUのアーキテクチャ
 8.6 QEMUのアクセラレーション
 8.7 QEMUで動作可能なOS
 8.8 QEMUを動かしてみる
 8.9 qemuのオプション
付録
 付録A ソースコードからのビルド
 付録B Red Hat Enterprise Virtualizationインストールガイド
 付録C virshリファレンス
導入部「KVMと仮想化技術の基礎知識」が実に秀逸である。仮想化とは何たるかという説明から始まり、そして数ある仮想化技術の中でもKVMはどのような部類に属するかということが非常によく分かる。この章があるおかげで、仮想化ソフトの経験が無い人でもすんなりと仮想化のしくみを理解することが出来るだろう。

GUIフロントエンドであるvirt-managerを利用した操作方法は、スナップショットをふんだんに利用して懇切丁寧に解説するという徹底ぶりだ。さすが「徹底入門」という名前を冠する書籍である。筆者のように自分で操作しながら覚えるタイプの人間には冗長のように感じられるかも知れないが、一歩ずつ着実に確認したいタイプの人にとってはうってつけではないだろうか。これでvirt-managerの操作方法が分からなければ、ヘソで茶が沸くというものである。

まさに徹底入門!!看板に偽りなしである。

プログラマも満足!

第7章では、libvirtを用いたプログラミング手法について触れられている。プログラマであれば仮想マシンの状態を自分で制御し、自動化したいと考えることだろう。そんなとき本書はうってつけだ。libvirtのPythonバインディングを用いたサンプルコードが載っているので、参考にして「オレオレ仮想マシン制御ソフト」を作るといいだろう。

充実の付録

本書の本編は207ページであるが、読み終えた後でもまだかなりページ数が残っている。なんと、付録の部分が90ページ以上もあるのだッ!付録にはKVMをソースコードからビルドする方法、Red Hat製品の案内、そしてvirshのリファレンスが掲載されている。いずれも入門ではなく応用に入る部類の内容であるから、付録に追いやられているのだろう。特にvirshリファレンスは手元にあると便利な内容である。入門だけでは満足できないという「違いが分かる読者」にとっても、悪くない構成になっていると言えよう。

KVM唯一の日本語書籍

本書は良書であると思うが、ライバルが居ないという面も否めない。KVMを勉強しようと思うと、本書以外に選択肢はないのである。従って、将来的にはもっと良い入門書が出る可能性はあるが、現時点では本書で勉強するのが一番だろう。ウェブで散見する様々な勉強法よりも、本書を読んだほうが遥かに効率的だ。KVMを勉強したければ本書は買いだッ!!そうでなければ不要!!

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