著者はUnofficial DB2 BLOGの管理人である下佐粉氏だ。ぶっちゃけDB2には触れたことがない筆者であるが、他のRDBMSを研究する意味でも拝読することにした。本書は筆者のような「DB2初心者」にも分り易い書籍であった。
もくじ
以下、本書のもくじである。第1部 データベースの仕組みと操作の基本 第1章 データベースの基本とDB2の仕組み 1-1 データベースに求められる5つの機能 1-2 DB2の内部構造を知る 第2章 DB2の基本的な操作と設定をマスターする 2-1 インスタンスを作成/起動する 2-2 データベースと表を作成する 2-3 DB2のコマンドを実行する 2-4 データベースを作成する前に考慮しておきたい4つのこと 2-5 構成パラメータを設定する 2-6 本番環境で使用するための最低限の設定 第2部 日々の運用のための基本ノウハウ 第3章 バックアップでデータを守る 3-1 バックアップの基本をおさえる 3-2 実際のバックアップ運用に求められるもの 3-3 バックアップ計画を立てる 3-4 その他のバックアップ方法 3-5 小〜中規模データベース向けのバックアップ運用 第4章 表を再編成してパフォーマンスを維持する 4-1 表の再編成の基本 4-2 効率的に表を再編成する 第5章 統計情報を更新してアクセスプランの精度を上げる 5-1 アクセスプランと統計情報が必要になる理由 5-2 統計情報を更新するための基本 5-3 効率的に統計情報を更新するには 第6章 自動保守で管理を効率化する 6-1 自動保守の基本 6-2 自動保守を利用する時の注意点 第3部 安定運用のための監視・問題判別のコツ 第7章 監視で事前に問題を発見する 7-1 何を、何のために監視するのか 7-2 DB2の「今の状態」を知る 7-3 DB2のリソースを監視する 7-4 DB2のパフォーマンスを監視する 第8章 トラブル解決のための問題判別の考え方 8-1 問題判別の4ステップ 8-2 原因が特定しきれない場合の対処法 8-3 イベントモニターの使い方 8-4 DB2が異常終了した際の情報を取得する 第4部 ひとつ上の性能を引き出す〜パフォーマンスチューニング 第9章 パフォーマンスチューニングの基本 9-1 パフォーマンスチューニングの基本的な考え方 9-2 ベンチマークを行う 9-3 アクセスプラン(実行計画)を把握する 第10章 パラメータを調整して高速化する 10-1 パラメータ変更の大半はメモリに関するもの 10-2 更新処理を高速化する 10-3 SQLを高速にする 第11章 物理設計を変更して高速化する 11-1 インデックスを調整する 11-2 バッファプールとログを調整する 11-3 表スペースをチューニングする 11-4 自動ストレージで表スペースの管理を簡略化する 11-5 DB2固有の機能を使って高速化する 11-6 データを圧縮する 付録 1 DB2の概要と可動条件 2 無料で使えるDB2 Express-Cと導入方法 3 開発言語と開発環境 4 参考文献と情報源
なんと網羅的であろうか。データベースとは?という最も基本的なトピックから始まり、そして最終的にはどっぷりとパフォーマンスチューニングにまで及ぶ幅広いトピックが扱われている。本書を読めばまさに即席で戦力になる人が育成できる。「即戦力」という看板に偽りなしといえよう。
MySQLerとしてはやはりMySQLとDB2の対比しながら読んでしまうのだが、他のRDBMSと対比することで、おのずとMySQLが優秀な点や劣っている点、そしてチャーミングポイント(笑)などが見えてくる。そういう意味でも楽しんで読むことができたと思う。
新人にうってつけ!
エンジニアにとって大事なことは何だろう?本書のカバーには次のように書いてある。データベース管理者の初心者と上級者とでは大きな違いがあります。それは、上級者は「仕組みを理解したうえで管理の手順を作成できる」ことです。(「はじめに」より)
世の中にはたくさんのサンプルやハウツーが存在します。しかしこれを単純にコピー&ペーストして実行してもうまくいかないことがたくさんあります。「なぜ必要なのか」がわかっていないと、応用できないのです。しかし基礎が理解できていれば、後は自分で調べつつ、応用する方法を習得できるようになります。
「なぜデータベースにはその機能が必要なのか」という「なぜ?」から始まって、それをひとつずつ素人でも分かるように丁寧に解説してくれている。パフォーマンスチューニングのような応用的な話題でも実に平易な言葉で解説がなされている。まさに、新人DBAにとってうってつけの書籍だと言える。
なぜ?ということを考えるのはエンジニアにとって重要なことだ。そういう意味でも、社会人になったばかりの新人が読むにも適しているかも知れない。
どこか残る一抹の物足りなさ
充実した内容の本書であるが、読み終えた後に何か物足りなさが残る。何故だろうと目次をパラパラとめくってみて、「欠けているもの」があることに気がついた。本書には「どのようにアプリケーションからDB2へ接続するか」とか「どんなデータ型があるか」とか「どのSQLがサポートされているか」というような、開発者向けの情報がないのである。なるほど、「管理術」とタイトルに銘打ってるだけあって、DBAにとって必要な知識がグッと凝縮されている。その反面、あえて開発者向けのトピックは書かず、次回作のネタに取ってあるのかなあ?などと勝手に想像をふくらませてしまった。こんな人におすすめ!
本書は次のような人に特におすすめ出来る。- これからDB2について学ぼうと思う人。業務でDB2を使う予定の人。
- 新人エンジニア。
- データベースの仕組みが知りたい人。
- DB2に興味がある人。
よくまとまっている書籍なので、読めばDB2運用管理のポイントがつかめること請け合いである。
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