More info...

2011-02-15

今私がSandy Bridgeを買わない理由

Sandy BridgeとはNehalemに続くインテルの新しいアーキテクチャの名称である。方々でも報じられているように、Sandy BridgeアーキテクチャCPUの性能は素晴らしいようだ。(例1例2)素晴らしい性能を見て購入を検討している方も、すでに購入してしまった方も大勢いらっしゃるだろう。だが、それでも筆者は絶対にSandy Bridge CPUを買うことはないだろう。なぜならば、Sandy Bridgeには我々の自由を脅かす2つの恐るべき機能が組み込まれているからだ!

Intel Insider

まず問題なのが、Intel Insiderと呼ばれるDRM技術である。インテルは、この機能をハリウッドの要請を受けて追加したらしく、「安全に高解像度の動画をストリーミングするための技術」だそうだ。ハリウッドから高解像度の動画が流出するのを防ぐコピー対策技術、まさにDRM技術なのである。

だがおかしなことに、インテル自身この技術のことを「DRMではない」と否定している。DRMには良くないイメージがあるからということらしい。だが、いくら取り繕ったところでDRMはDRMである。例えばComputer Worldの記事では次のようにインテルの主張が説明されている。

But Insider is not intended to be digital rights management technology, and it is not intended to limit the availability of content to users, said Josh Newman, graphics marketing director at Intel.

筆者訳:InsiderはDRMを目的とした技術ではない。コンテンツの利用を制限することもない。とうのはインテルのグラフィックスマーケティング部門のディレクター、Josh Newman氏の言葉だ。

Studios want to protect their premium content, and they are wary of streaming it to PCs, which are viewed as insecure devices, Newman said. Insider technology establishes a secure connection to prevent movies from being copied from over the network or inside the PC.

筆者訳:映画スタジオは自らの価値あるコンテンツを保護したいと考えている。そのため、PCに対してストリーミングすることを躊躇している。何故ならば、コンテンツが安全でないデバイスで視聴されるからだ。Insiderはセキュアな接続を確立し、ネットワーク上やPC内部でコンテンツがコピーされることを防ぐ技術である。(Newman氏談)

どう見てもDRMです。本当にありがとうございました!!

これをDRMでないと言い張るのは、男女がホテルの同室で一夜を共にして浮気ではないと言い張るのと同じぐらい無理があると言えよう。インテルの説明は誠実ではない。本当はDRM技術なのにDRMではないと説明しているのだから。

DRM最大の問題は、他のデバイスでは再生が出来ないということだ。インテルの主張が正しいなら、ハリウッドの高解像度映像をPCで再生するには間違いなくSandy Bridgeが必要になる。古いPCでは再生できないのか?AMD社製CPUを搭載したPCでは?ARM系CPUを搭載したAndroid端末では?全てNoだ!

そういう意味では、インテルとハリウッドの利害は一致しているのかも知れない。ハリウッドの映画を高解像度のストリーミングで楽しみたいと思うユーザーは、Sandy Bridgeを選ぶと考えられるからだ。自由を愛するのであれば、ストリーミングでハリウッド映画など楽しもうと考えないことだ。高解像度が良ければ何もストリーミングに拘る必要はない。Blu-Rayで視聴すれば良いだけだ。我々は、くれぐれもインテルとハリウッドの言葉巧みな誘惑に踊らされないようにしなければならない。

Anti-Theft 3.0

言葉の通り受け取れば、これは盗難防止機能である。こちらの記事(Intel's Sandy Bridge processors have a remote kill switch )によると、遠隔操作でPCをシャットダウンしてしまうことが出来る機能ということらしい。しかもハードディスクを暗号化しておけば、盗まれても起動しないしデータが漏洩することもないということだ。(ただしパーツ取り用には使えるだろう。)

インテルのページによると、Anti-Theft 3.0が有効になっているPCは、一定時間以内に中央サーバーへ「チェックイン」することが求められる。一定時間以上「チェックイン」をしないと「盗まれた」と判断し、自ら起動しなくなるようである。長期間ネットワークへの接続ができなかったり、電源をOFFにしたまま放置しただけでも、盗難されたと判断されることになる。それは裏を返すと常時電源ONで常時オンラインになっていなければならず、少なくともエコとは無縁であると言えよう。

これだけなら、別に問題はないというよりか、PCの安全性が高くなって良い技術ではないかと錯覚してしまうかも知れない。問題は、中央サーバーがどこにあるのかということである。中央サーバーが例えばPCを購入した企業のデータセンターにあるのなら、筆者はまったく問題ではないと思う。何故なら、ユーザーが完全にPCの制御を出来るからだ。しかし、中央サーバーというのがインテル自身が運営しているような場合はどうだろう?

この前のエジプトのようにインターネットが一時的に使えなくなったら?インテルのデータセンターが大地震や火災に見舞われたら?中央サーバーがクラッカーに侵入されてしまったら?

いや、最大の脅威はそれではない。最大の脅威は米国政府である。政府は様々な理由をつけて、インテルに対して強制的なKILLスイッチの発動を要請する可能性があるからだ!対テロ、情報漏洩対策といった、お決まりの謳い文句によってそれは行われるだろう。もし、Anti-Theft 3.0が世界中の全てのPCに搭載されていたとしたら、それはそれは恐ろしいことになることが容易に想像できる。PCは誰が所有しているのか、どこの国にあるのかといったことは、IPアドレスから容易に判断可能だ。米国政府にとって不利益な企業や国家が狙い撃ちでPCを使用不可能にされる可能性があるだろう。

政府がそんな独裁まがいのことをするはずがない!と言い切れるだろうか。例えばWikiLeaksなどがAnti-Theft 3.0つきのPCを所有していたら・・・。ご存知の通り、WikiLeaksでは資金提供の妨害のためにPayPalアカウントが停止されてしまった。政府が同じように、CPUメーカーに対して圧力をかけないという保証はどこにもないのである。

幸いにして、今のところAnti-Theft 3.0はメーカー側でON/OFFを選択することが出来るようである。恐らくAnti-Theft 3.0は企業を対象にした機能なのであろう。くれぐれも企業のIT担当者はAnti-Theft 3.0が有効になったPCを購入しないよう注意されたい。

まとめ

Sandy Bridgeに搭載されているIntel Insider、Anti-Theft 3.0という2つの危険な機能について紹介した。いずれも汎用プロセッサに搭載するには適さない機能であることは、火を見るよりも明らかである。ハリウッド映画の高解像度動画ストリーミングや盗難防止といった甘い誘惑に踊らされないよう注意して頂きたい。筆者は、甘い誘惑の引換えに自由を差し出すような真似は絶対にしない。そう、絶対にだ!!だから、Sandy Bridgeを購入しないのである。

2 件のコメント:

  1. 昔、ペン3にPSNが搭載された時も同じような議論が起こっていましたね。懐かしい。

    返信削除
  2. masashiさん、

    コメントありがとうございます。

    まさにPSNと通じるものがありますね。しかし度々こういう話が出てくるのは困ったものです。

    返信削除