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2016-09-28

キーボードの理想形を追い求めて、キーボードについて談義してきた話。

少し古い話になるが、先月LLoT(Lightweight Language of Things)というイベントでキーボードに関するパネルディスカッションに参加してきたので、ブログでも報告しておこうと思う。

キーボードにこだわろう

「キーボードにこだわろう」と題したそのひとコマでは、日本におけるこだわりキーボードメーカーの巨匠であるPFUと東プレから、それぞれパネリストを招待するという豪華な顔ぶれである。これにダイヤテックも加われば完璧だっただろうか。

そんな豪華な顔ぶれの中に、私はErgoDox派として参戦してきた。もう一人のパネリストである前田氏が司会進行を兼ねる形でディスカッションが行われた。前田氏はKinesis Advantageの使い手である。

以下は私が自己紹介とキーボードに対するこだわりなどを語るときに使用したスライドである。興味があれば見てみて欲しい。


HHK ProとRealforce

何を隠そう。私は今回のパネルディスカッションに参加された2つのメーカーのキーボードを、かつて愛用していたのである。まさに「愛を持って用いる」というぐらい、本気で惚れ込んで使用していたと言っても過言ではない。いちファンとして、中の人と話ができるということは、極めて貴重な体験であったと言える。

ちなみに、愛用していたHKK ProとRealforceはまだ所有している。長年使い込んだため表面に小キズや汚れがあるものの、十分に使用可能な状態となっている。これらのキーボードは静電容量無接点方式であり、物理的に接触するスイッチというものが存在しないため、摩耗する箇所がなく、必然的に長持ちするのである。もちろんスイッチが極めて軽く、タイピングで指を酷使しても疲れづらいという側面もある。従って、耐用年数を考えると、限界までキーボードをタイプしまくるタイプの人にとっては、コストパフォーマンスに優れた製品であると言えるかも知れない。まだ壊れていないのでなんとも言えないが、いずれのキーボードもあと10年ぐらいは軽く使える雰囲気がある。人によっては、PS/2時代のものを未だに愛用しているという猛者もいるらしい。

ErgoDoxへ移行してしまった今でも、HHK ProとRealforceは良いキーボードだったと思っている。普通のレイアウトが良いという人は、ぜひ一度使ってみて欲しい。

手の自然なポジションを求めて

私は現在、ErgoDoxにかなり満足している。一切の不満がないというわけではないが、以前使っていたキーボードよりも満足度は高いと言える。

それは何故か。

やはりセパレート型という自由度の高さから来る利点によるものが大きい。セパレートにすることで、両手を自然なポジションに配置できる。そのため、肩に変な力がかからない。

また、セパレートにすることで、キーボードを水平から角度をつけて配置することが可能なのも大変良い。人の手は長時間水平なまま保つようにはできていない。ゾンビのように手を前に出して手のひらが水平にし、そのままの姿勢を保って見て欲しい。疲れるから。

ところが、手のひらの角度を少し垂直方向へ変化させてみよう。よくIT系の人がインタビューされている写真でろくろを回しているが、あの姿勢である。

なぜ人はインタビューの時にろくろを回してしまうのか。それは、ろくろを回すような姿勢が、手にとって自然にリラックスできる配置だからではないか。私はそう考えるのである。少なくとも、ゾンビのような姿勢より、前腕はずっとリラックスしている。

リラックスすることは、人にとって極めて重要なことである。特にプログラマのようにクリエイティビティが必要な人にとっては、リラックスすることは脳を活性化させ、仕事の効率を上げ、時として難題に立ち向かうという点で、極めて重要である。ガチガチに身体をこわばらせて緊張していては、アイデアも浮かんでは来ないだろう。

セパレート型のキーボードに角度をつけ、中央を隆起させて角度をつけることにより、タイピングしているときも極めて自然な姿勢をキープすることができるのである。

現在のレイアウト

ErgoDoxのもうひとつの利点は、レイアウトを自由に変更できるという点である。特にシフトやCTRLなどの修飾キーや、記号などの配置をカスタマイズすることにより、親指を活用できるようになる点が大きい。

通常のキーボードでは、親指が担当するエリアにはスペースぐらいしかない。せっかく一番力強い指なのに、遊んでいるのは勿体無いのである。

ErgoDoxでは、親指が担当箇所にキーが左右ともに6つある。とはいえ、レイアウトに若干難が有り、実際に私の指のサイズで届くのは、それぞれ3つまでである。しかし、頻繁に使うシフトやCTRLを親指の担当範囲にできるのは大きい。他の指の負担を減らすことに繋がるからだ。

参考までに今私が使っているレイアウトを以下に示しておく。日々カスタマイズして使っているので、明日にはこのレイアウトではなくなっているかも知れない。ちなみに、前述のスライドにもレイアウトが載っているが、それからさらに大きく変わっていたりする。

ErgoDox EZ Configurator

このグラフィカルなConfiguratorはErgoDox Ez用であるが、通常のErgoDoxでも利用可能となっている。ErgoDox Infinitiは持っていないので、使えるかどうかは分からない。

ErgoDoxの不満点

極めて快適なErgoDoxではあるものの、全く不満が無いわけではない。一番大きな不満点は、キーボードが真っ平らで、キーがすべて同じ平面上に並んでいるという点である。

キーは角度がついていても良いのではないかと思う。Kinesis Advantageは皆さんよくご存知の通り、キーがおわん形に配置されている。

参考:Advantage for PC & MacDiscontinued - Kinesis Corporation » Kinesis Corporation » Where comfort and productivity go hand in hand.

指が最適なパワーを出すことができる角度は、平らな平面へ向かってキーを押下する角度ではないのだ。だからKinesisのデザインは一理ある。特に手前のキーを押下する際は、このような角度になっているのがベストだろう。反対に、奥側のキーを押すときの角度には若干の疑問が残る。最も残念なのは親指が担当するキーを押下する角度だ。

親指が動く自然な角度は、他の指とは根本的に異なる。他の指とは、可動する向きが90°違いがあるのだ。

ところが、我々が普段親指でキーボードを押すときは、次の写真のような角度で力を入れている。これは本来の親指が動くべき向きではない。キーボードは親指を活用することを前提には作られていないのである。残念なことに、Kinesisでさえ親指が力を入れる方向が間違っている。


親指は本来次のような角度に動くようになっている。ならばキーをタイプするときも、できるだけこの角度に近づけるべきではないだろうか。


そこはさすがオープンソースで公開されているErgoDoxだけある。既にそのような角度にハックした逸品を作成するプロジェクトがあるようだ。

Axios: Open Source Modular Ergonomic Keyboard | Crowd Supply

個人でハックして親指の角度をつけている例もいくつかある。

Keyboard Mod

ErgoDox thumb cluster mod

いずれにせよ、これが本来親指が力を入れるべき角度であり、より疲れない形なのだ。もちろん、身体は個人差があるため、絶対的に正しい角度というものはないだろうが、少なくとも人間の手がものをつかむようにできている以上、他の指と同じ角度で親指を使うのは、非効率だと言える。

ちなみに、おわん形にするにはフレキシブルプリント基板を使うという手があるようだ。

adereth/dactyl-keyboard: Parameterized ergonomic keyboard

いずれ暇ができたら私もErgoDoxをカスタマイズした自分専用の至高のキーボードをを製作したいと考えている。

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