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2016-01-26

キーボードを新しくした話(ErgoDox)

昨年の話になるのだが、キーボードを新調した。それまでは東プレのRealForceシリーズを、その前はPFUのHHK Proを使用していたのだが、どうにも満足できなくなってしまったのである。ちなみに、HHK ProからRealForceへ乗り換えた理由は、ファンクションキーが欲しかったからである。Linuxユーザーなのになぜファンクションキーなんて使うんだ!!邪道だ!!と思われるかも知れないが、邪道で結構。いろんな機能をショートカットキーとして登録したい私には必要だったのである。

さて本題である。この度私が購入したキーボードを紹介しようと思う。

超自由度が高いオープンソースなキーボード、ErgoDox

RealForceやHHK Proを何故使っていたかというと、静電容量無接点方式のキーが良かったからである。日々膨大な回数のタイプをするため、ソフトなタッチで指が疲れないキーボードがほしかったのである。タイピングがボトルネックになるようでは、最高のパフォーマンスを出すことはできないからだ。

だが、それでもまだ課題はあった。そう、キーボードの配列である。

私は以前から、キーボードはUS配列を好んで使用してきた。これは確かにJIS配列より、私にとっては使いやすかったのだが、それでもその配列は歴史的な経緯から決まったものであり、必ずしも最適だとは思えなかった。特に親指周辺のキー配列は非効率だ。一番力強い親指がほとんど遊んでしまっている。これはなんともったいないことだろうか。

そこで、目をつけたのがKinesisである。エルゴノミクスキーボードを求める者にとって、知らぬ人は居ないであろう有名所だ。Kinesisを買おうかというのはさんざん迷ったのだが、最終的に選んだのはErgoDoxというオープンソースのキーボードである。

ErgoDox.org - Home Page

ErgoDoxはKinesisを意識した仕様になっていると思う。例のお椀型のキー配置は実現できないのだが、キーが縦にまっすぐ並んでいる点、そして親指で操作する部位のキー配列がそっくりである。ErgoDoxはKinesisの劣化版とまでは言わないが、類似品と言って差し支えないのではないだろうか。

ErgoDoxはその見た目もさることながら、すべての仕様がオープンソースで公開されているというのが最大の特徴だ。基盤やケースの形状だけでなく、USBコントローラー上のマイクロコードまで、すべてオープンソースである。その気になれば如何様にもカスタマイズすることが可能であり、世界にはいろんな猛者がいるようである。

外観

さて、私がゲットしたErgoDoxの外観を紹介しよう。まずは真上から見た写真。


このように、ErgoDoxはセパレート式の配列となっており、使うときは左右に広げて配置する。なぜセパレート式が良かったのかというのは色々理由があるのだが、最大の理由は腕の疲れにくさである。腕はやはり肩幅にあるのが一番疲れない。通常のキーボードではどうしても中央にギュッと腕を寄せる必要があり、気がつくと特に大胸筋や腕の付け根が疲れてしまっている。長時間タイプするには、腕をもっとリラックスさせた状態にしておくのが良い。そして、その効果は抜群であった。

ただ、セパレート式にしたことで気づいた点がある。それは手のひらの角度が水平だと疲れるということだ。手を自然な形でリラックスさせて、机の上に投げ出して見て欲しい。手はゾンビのように水平になるのではなく、むしろ垂直方向のほうが自然な感じがするのではないだろうか。90度にするべきだとまでは言わないけれど、完全に水平だと疲れてしまう。

そこで、ErgoDoxを少し傾けることにしてみた。試しに30度の傾斜をつけた台座を製作してみたのだが、こうするとかなり具合が良い。完全にリラックスした状態でタイピングが可能である。私はパームレストも使う派なので、そちらもキーボードにあわせて若干高くしている。


台座を横から見たところ。30度とはこのぐらい。


台座だけを見たところ。これはアクリルを接着して作成したものである。アクリル板はいつもはざいやというショップで必要な大きさにカットしてもらったものを購入している。アクリルで工作したい人は、このようなショップを使用すると手間いらずだし仕上がりもキレイなのでオススメだ。ErgoDoxを自分でつくる場合でも、こういうショップに図面を送れば加工してくれるだろう。


ErgoDoxの最大の問題点は、それに慣れてしまったら他のキーボードを使うことができなくなってしまうという点だ。いや、別に使うこともできるんだけど、タイピングはErgoDoxほど速くできないし、疲れやすいと感じてしまう。やはり慣れたキーボードを使うのが一番なのである。

そんなわけで、必然的にErgoDoxを持ち歩くことになってしまう。そしてノートPCと組み合わせて使用する。以下はその様子をおさめた写真だ。私の今の愛機はXPS 13なのだが、その左右にキーボードを配置している。XPS 13の縁の上に乗っかってるように見えると思われるだろうか?実は実際、上に乗せて傾斜をつけて使用している。そのまま置くと滑るし傷がつく上に、もう少し傾斜が欲しいので、ゴムを間に挟んでいる。


昨年、長野で開かれた読書会にもErgoDoxを持参した。そのとき激写された写真が、とみたさんのブログに載っているので興味があれば見て欲しい。

キーボード配列のカスタマイズ

さて、ここまでの記事を読まれたかたは、「なんだただの変態・・・もとい、変わったキー配置のキーボードじゃないか」と思われるかも知れない。それはある意味正しいのだが、ErgoDoxの真の姿を表しているとは言えない。

ErgoDoxの真価は、そのカスタマイズ性の高さにある!!

と言っても過言ではない。なんと、ErgoDoxはすべてのキー配列を自由に決めることができるのだ!!

また、ErgoDoxは見ての通りキーが若干少ない。そこで、レイヤーという概念を導入している。複数のレイヤーに別の配列を割り当てることで、レイヤーを切り替えながら思い通りのレイアウトを使うことができるというわけだ。ちなみに、私は次のように2つのレイヤーを使っている。L0が通常使うもので、L1はファンクションキーやカーソルキーなどのためのものである。


キー配列はたまに気に入らないところが出てきたら変更しているので、これが最終形態というわけではない。使い続けていくうちに、より自分が気に入る配列に変更できるというのがErgoDoxの最大の魅力だろう。キー配列は好みが大きく出るところなのであまり多くは言わないでおくが、やはり親指でシフトキーを押せるのは快適である。

ちなみに、このようなカスタマイズを可能にしているのはTeensyというUSBコントローラーである。実は、このTeensyを使ってキーボードを自作することも考えたのだが、ErgoDoxを知り、渡りに船で購入するに至った。自作で思い描いていたものとは少し違うが、今の用途ではこれで十分である。

購入方法

ErgoDoxはオープンソースのキーボードなので、スキルのある人はすべて自分で製作しても良いだろう。

だが、私はそのようなスキルも時間も無かったので、組み立ててくれる業者から購入した。購入にあたっては、以下のページを参考にさせて頂いた。感謝!!

ergodoxを買いました | kammers

このページにあるのと同じように、本体はFalbatech社から購入した。また、キーキャップについては残念ながら売り切れていたので、Pimpmykeyboard.comで購入した。Pimpmykeyboard.comにはErgoDox用のセットもあるので探してみて欲しい。ただ、ErgoDox用は無印字である。私は印字ありのほうが好きなので、印字ありになるようにキーを組み合わせて購入した。

まとめ

キーボードは非常に大切だ。日々使用するパソコンにこだわる人は、とかく数値でわかりやすいスペックに目が行ってしまいがちである。それは大事ではないとは言わないが、大事なのはスペックだけではない。コンピュータを快適に使用するには、自分とコンピュータとの接点、つまりユーザーインターフェイスに拘るべきだろう。キーボードだけでなく、ディスプレイ、スピーカー、マウスなどもこだわったほうが良い。快適性を追及するなら椅子やメガネも大事だ。(余談だが、メガネのレンズはかなり良いものを使って、常によく拭いておくべきだ。どんなに美しいディスプレイを使おうが、メガネが曇っていたら台無しである。)だが、なんと言っても入力の要はキーボードである。キーボード如何で個人の生産性は大きく変わる!!それは人の脳がコンピュータと直結できるようになるまで変わらないだろう。

もし、あなたが普段から今のキー配列に不満を感じている、あるいはより効率的なキータイプをしたいという要望をお持ちであれば、ErgoDoxはオススメだ。だが、ErgoDoxは他のキーボードとはあまりにも違う。いや、Kinesisならそれに近いだろうか。ErgoDoxにしろKinesisにしろ、一度それを使い始めるともう他のキーボードでは我慢できなくなってしまうだろう。

この道を選ぶともう後戻りできない。

漢のコンピュータ「道」などというタイトルでブログを書いているが、どうやら私はもう引き返せない道を選択してしまったようである。しかし後悔はしていない。

そもそも人生というものは、いつだって選択の連続であり、一つの道を選べば他の道はなくなるものである。今日も自分が選んだ道を信じて歩み続けるのみである。

余談

もし、この記事をキーボードメーカーの人が見てくれたら、ErgoDoxの製品化を検討して頂けないだろうか。ErgoDoxはオープンソースなので、勝手に製品化してもライセンス料は発生しない。エルゴノミクス製品としてぜひ。

余談2

以外かも知れないが、ErgoDoxを使うようになって、普通のキーボードをタイプするときのタッチが改善された。今まで普通のキーボードでは小指をあまり活用できていなかったのだが、ErgoDoxでは小指まで余すところなく使うので、ラップトップのキーボードを仕方なく使う場合にも小指をちゃんと使うようになったのである。めでたしめでたし。

8 件のコメント:

  1. 以前使っていたRealForceとくらべてキータッチの軽さはどうですか?

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  2. Gateronの青軸なので55gです。なので少しRFのほうが上ですね。ただし、RFにも55gのモデルがあるので、それと同じです。問題は耐久性と音でしょうか。やはり機械ものは劣化しますので。

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  3. こんにちは。

    僕もこの記事と「あの超オス〜」を読んでセパレート式に興味が出てきました。しかし、キーボードと言っても千差万別でしかもセパレート式キーボードで検索しても日本製が出なくてサッパリどれがいいものかわかりません…

    なるだけ安くてMacユーザーでも使いやすいようなキーボードってありますか?

    いきなり図々しい質問すいません…

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  4. クロパンダさん、こんにちは。

    日本製・・・だとちょっと知らないですね。日本のメーカーはあまりニッチなエルゴノミクス製品には手を出していない印象があります。というか、世界的に見てもセパレート式は選択肢は多くなくて、いずれも少量生産なので量産品よりもかなり価格は高くなってしまうんですよね。"エルゴノミクス キーボード"で画像検索してもらえば、どんなのがあるのか分かります。そこまでセパレートはしていないですが、MSのナチュラルキーボードなんかも普通のキーボードよりは負担が少ないと思いますよ。MSのは量産効果のせいか、かなり安いです。MSのがMacで使いやすいかどうかは、済みませんが分かりません。

    ErgoDoxについては、自由にキーをカスタマイズできるので、CommandキーはWinキー、OptionキーはAltキーという対応を覚えておけば、好きなように配置すれば良いのではないかと思います。

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    1. なるほど、セパレートは世界的にも少ないのですね…
      もう少し考えてみようと思います。ありがとうございました。

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  5. さきほど新沼さんがツイートされていたのですが、新沼さんはμTRONキーボードをカスタマイズしたものを使われているそうです。

    http://www.personal-media.co.jp/utronkb/overview.html

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  6. 横から申し訳ありません。
    通りすがりの者ですが、クロパンダさん、Matias Ergo ProのMac版はご存知でしょうか。
    ペンタブを挟むように配置できるので愛用しております。
    Freestyle2のVIP3KIT相当付きです。

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  7. ちょっとキーボードに2万はまだ出せませんね…こんなこと言ってたらセパレートは難しそうですねw とりあえず覚えておきます。紹介ありがとうございました。

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