日本人がAndroidよりiPhoneを選ぶ本当の理由 - NAVER まとめ
このまとめ記事で紹介されている「本当の理由」というのは、「海外ではAndroidが安いから。iPhoneは給料の何倍もするので高嶺の花」といったような内容であるが、この認識は半分正解で半分間違いである。海外でAndroidが異常に安いのではなく、日本でiPhoneが異常に安いため海外と価格が逆転してしまっているというのが現状だ。今日はこの点について少し分析してみようと思う。
日本ではiPhoneが安い!
日本でiPhoneが安いと言っても、どれだけ安いと言えるだろうか。一番高額なiPhone 5 64GBで英米豪と比較してみよう。
米国(Apple iPhone 5 - 64GB - Black cell phone from AT&Tより)
2年縛りで399USD。(39599円)
英国(Choose an iPhone Pay Monthly Deal on Vodafone UK - Vodafoneより)
データプランによってiPhoneの価格が変動する。一番安い500MBまでのデータプランの場合、通信料が38英ポンド(5874円)でiPhone本体は269 英ポンド(約41588円)2GBのデータプランの場合、通信料が47英ポンド(7266円)でiPhone本体は159英ポンド(24582円)。
オーストラリア(Telstra - Apple iPhone 5, iPhone 4S & iPhone 4 Mobile Phones & Plansより)
データプラン2GBまでの場合、通信費と本体のトータルコストで112AUD(約1万円)
日本(iPhone 5 一覧|ソフトバンク オンラインショップより)
新規、MNPの場合iPhoneの実質負担本体価格が20640円(840円 x 24)、機種変更の場合は30000円(1250円 x 24)、となりかなり安いことが分かる。日本の生活水準から考えるとさらにお手頃感が増す。
日本では本体の価格は海外より安いというのは間違いではなさそうだ。安いから売れるという図式が見えてくる。
賦課方式
先ほど紹介した本体価格は安いが、実は日本は通信費が海外よりかなり割高になっている。
料金・割引 | ソフトバンクモバイル
上記のページによるとiPhoneは6775円〜、その他のスマホは7280円〜となっている。(2013年9月初頭現在)
「なぜ日本ではiPhoneが安いのか。」なんの事はない。日本では単に機種本体の代金が通信費に転嫁されているだけなのだ。
日本では以前から賦課方式で携帯端末が販売されてきた。それがスマートフォンでも引き継がれているだけのことである。最近は料金が見えるように是正されたが、それでも通信費への転嫁は続いている。通信費が異常に高いからだ。
ソフトバンクの場合はiPhoneのほうが500円ほど安くなっている。本来割高であるはずのiPhoneが安く買え、さらに通信費まで安いとなると、そりゃiPhone以外を選べというのが無理というものだろう。
なぜAndroidユーザーはソフトバンクから乗り換えないのか
ソフトバンクのAndroidユーザーは割高な通信費を支払わされている。だったら何故他のキャリアに乗り換えないのだろうか。ちなみに、ドコモとauの通信費はそれぞれ次のようになっている。
ドコモ:6730円 (ドコモ スマートフォンおすすめ料金プラン | 料金・割引 | NTTドコモより)
au:7280円 (4G LTEスマートフォン おすすめ料金プラン│料金・割引│auより)
auはソフトバンクとそれほど価格が変わらないが、ドコモはソフトバンクのiPhoneよりさらに安い。安いならドコモを選ばない理由は価格以外と言えるので、最大の理由は2年縛りや友達との無料通話ではないだろうか。
正直、ドコモが一番安いというのは意外である。Xi(LTE)でかなり価格が下がったと記憶しているが、私には「ドコモは高い」という印象があったので、他のキャリアよりも安いのはあまり知られてないのではないだろうか。
日本でもっと安くスマホを使う方法
それほど通信量が多くないのであれば、断然オススメなのがbmobileである。SIMロックフリーの端末が必要になるが、2GBまで速度制限がないプランなら月々4,060円となっている。MNPロンダリング対策として初年度の1年縛りはあるものの、それ以降はいつでも追加料金なしで契約を解除できる。回線はドコモのものを使用しているので品質が悪いわけではない。
実はかく言う私はbmobileユーザーである。端末にLTEがついていないので3G用のプランであるが、1GBまで速度制限ナシのプランで月々3,270円に抑えている。SIMロックフリーの端末は2.5万円ほどで入手したが、通信費がこれだけ安いと半年ほどでペイできてしまう。端末の保証も無いけど、壊れたら買い直すつもりだ。半年に1回までの故障なら、買い換えても他のキャリアを使うよりも安上がりとなる。
キャリアメール等が使えないという制限はあるものの、他のメールサービスを使っているので特に困ることはない。Wifiを併用しているし、主な用途は地図、乗換案内、Twitter等なので1GBを超えたことは今までない。(さらに1000円安い速度制限ありのプランでも良いかなと最近思い始めている。)
とにかく安くスマホを使いたいというのならbmobileはオススメである。
安さは重要
日本でiPhoneが売れているのは端末も通信費も安いからだが、新興国では未だに安いSymbianが売れているという点も見過ごせない。
Nokia、QWERTYキーボード搭載のSeries 40端末「Asha 210」を発表 - ITmedia Mobile
なんと価格は72ドルである。素の値段ならiPhoneの1/10程度であり、圧倒的に安い。日本でiPhoneが売れるのは、日本人がiPhoneを買える、あるいはクソ高い通信費を支払える能力があるからだという点は見過ごせないだろう。
商品が売れるかどうかにおいて、言うまでもないが価格は非常に重要なファクターである。価格を抜きにした議論ほど虚しいものはないと思うのだが、ITMediaでは全く価格について触れない議論が展開されていて、キリ揉みしながら椅子から転げ落ちてしまった。
神尾寿の時事日想:なぜ、日本でiPhoneは売れるのか。 (1/5) - ITmedia Mobile
iPhoneの優位性は「ユーザーの多さ」と「評判のよさ」ということらしい。他より安けりゃ当然文句も言わないでしょ。
ところで、最近Nokiaの携帯端末事業がマイクロソフトに買収されるというニュースがあったが、Windows Phoneのような高価な端末はうまく行かない可能性が高いと思っている。今のNokiaの真骨頂は新興国向けの安い端末にあるからだ。(マイクロソフトが72ドルのWindows Phone端末を出せるなら勝ち目はあるかも知れない。)
ドコモが取るべき対抗策
iPhoneを持たないドコモがこれからソフトバンクやauに対抗するにはどうすれば良いだろうか。
ドコモもiPhoneを販売するという対策が最もイージーなものであるが、端末をかなり安く販売するため、全体としてペイできない可能性が非常に高い。恐らくソフトバンクに対抗するためであろうが、Xiにおいてかなり通信費を下げてしまったので、同じように他のスマートフォン向けの通信費だけを値上げするという必要性に迫られるだろう。そうなると公取委や消費者庁が黙っていないので、会社としてそのような戦略は取りづらい。ドコモがiPhoneを販売するというのは、損を覚悟しての捨て身の戦略となるだろう。
iPhoneを販売しないで対抗するにはどうすれば良いだろうか。やはりドコモ自身の利益減に直結してしまうが、端末あるいは通信費いずれかの値下げが一番効果的ではないかと思う。同じ捨て身の戦略なら、勝手知ったるフィールドで戦ったほうが勝率が高くなる。スマートフォンではかつての着うたのような大きな副収入を期待できないので、価格を下げるのもかなり厳しい戦略であることは間違いない。
安さという点では、ツートップ戦略はそれなりに効果があったように見える。というのも、7月にドコモは純減から純増に転じたからだ。ただしツートップ戦略には大きな代償も伴った。NEC、パナソニックが相次いでスマートフォンから撤退してしまった。長期的に見るとこの損失はかなり響いてくることになるだろう。
土管屋にならないために通信費を高止まりさせておきたいという動機は理解できる。だが、ツートップのような戦略は、さらに大きな犠牲が伴うことになる。iPhoneは損を覚悟の捨て身の選択となれば、状況は八方塞がりのように見える。
ここから状況をひっくり返すには、今までのやり方を綺麗サッパリ捨ててしまって、ゲームのルールを変えるというのも選択肢の一つである。敢えて土管化するのだ。以前のエントリで書いたように、ユーザーが本当に欲しいのは土管である。品質の良い土管が割安で得られるとなればユーザーは飛びつくだろう。賦課方式を止め、bmobile程度の価格で土管を提供してみてはどうか。bmobileが利ざやを取ってさらにペイできるのだから、ドコモが同じ価格でペイできないはずはない。ドコモが賦課方式を止めれば、ソフトバンクの戦略は根底から覆ることになるだろう。
0 件のコメント:
コメントを投稿