なぜDRMがダメなのか。ウェブの良い点はHTMLという共通の規格によって、ブラウザーが違えど誰もが同じページを参照することができるということだ。どのようなOS、どのようなデバイス、どのようなブラウザでも関係ない。現在でもFlashが組み込まれたページという問題はあるものの、HTMLによる表現の共通化は割とうまくいっている。標準化が進むHTML5はさらにそのFlashも不要になる可能性を秘めている。DRMはウェブの良さを台無しにするからである。
EMEはそのような自由なウェブを真っ向から否定するかのような存在なのだ。
もし、HTMLにDRMが追加されたら
そのような事態になってしまうのは冗談ではないが、もしHTMLにDRMのための規格が追加されたら、ウェブは今のように自由なものではなくなってしまうだろう。EMEではブラウザにDRMがかかったメディアを再生するためのプラグインをインストールさせる。そのようなプラグインはDRMの仕組みを管理する側がバイナリとして提供することになるだろう。「プラグインをインストールしない限りはメディアを再生できません」というわけだ。DRMは自由なソフトウェアも否定する。DRMに対するよくある誤解は、それが暗号化技術だというものだ。DRMは暗号化のように情報を読み取らせることができないようにするための技術ではない。言ってみれば「コピーされにくくする技術」だ。身近なもので言えばテレビのスクランブルを思い浮かべてもらえばいい。メディアはいったん難読化されている。しかしメディアを再生するすべての端末は再生方法を知っているのである。メディアを再生するということは、最終的にナマの情報が端末上で再現されているのである。ただし端末側にブラックボックスがあるために、容易にナマの情報にアクセスする手段がないということだ。EMEの場合はプラグインがそのブラックボックスになる。
だからEMEのようなDRMは問題だらけだ。もちろんそのようなプラグインをすべてのブラウザに対して移植することはできない。従ってシェアが高いオペレーティングシステム(以下OS)、シェアが高いブラウザに対して優先的に移植が行われるだろう。するとプラグインをインストールできないブラウザはシェアを失うことになり、独占はよりいっそう進むことになってしまう。ブラウザが対応するOSの種類も限定されるため、OSの独占も進むことになるだろう。独占はユーザーにとって悪だ。新しいOSやブラウザが登場する芽を摘んでしまうため、既存の製品の進化は怠慢になり、価格も高騰してしまう。だから我々は独占を許してはならない。
ブラックボックスは容易に修正することができないというのも問題だ。EMEプラグインにブラウザをクラッシュさせてしまう不具合や、任意のコードを実行するような脆弱性があった場合、それがブラックボックスでは手が出せないのである。プラグインの提供元が修正を終えるのを指を咥えて待っているしかない。ブラウザがプラグインのせいで頻繁にクラッシュしても、その原因を調べることすらできないのである。
Don't be Evil
フリーソフトウェア財団の声明文では、EMEを推進している企業としてMicrosoft、Google、Netflixが挙がっている。正直、Googleの名前が挙がっていることには驚いた。Googleはウェブを繁栄させることで利益を上げるというビジネスモデルだからブラウザの独占が進むDRMに加担するべきではないし、何よりかつて「Don’t Be Evil」が社是であった。(今はそうではないが。)しかしこれはどういうことだ!ウェブにDRMを持ち込んでウェブを一部の企業のものにしよう、ウェブを思い通りにコントロールしようという試みは、紛うことなき悪だ。その立場を利用して独占を強めようとするその姿勢は邪悪な企業そのものだ。
Googleよ。EMEについてはどうか考えなおしてもらえないだろうか。
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