More info...

2012-07-23

最高の土管が欲しい

筆者は1年半ほど前に携帯のキャリアをドコモへ変更した。それまではソフトバンクを使っていたのだが、筆者の生活圏との相性が良くなかったようで、電波の状況が芳しくなかったのだ。ドコモへ変更してからは電波状況は満足のいくものとなった。しかし電波状況以外の問題で返って不満が募る結果となってしまった。なぜか?ひと言で表すとサービスに制約が多すぎるからだ。様々な不満を心に抱いていたところ、次のようなニュースが報じられた。

ドコモ社長「米アマゾンになる」 来年度からモバイル通販で野菜、健康機器など販売 - SankeiBiz(サンケイビズ)

このニュースには閉口せざるを得ない。不満が爆発してしまいそうなので、ここらへんでひとつぶちまけてみようと思う。

IMEI規制


まず一つ目の問題は、それまで使用していたSIMロックフリー端末が使えなくなってしまったということだ。正確にいうと使用できるのだがデータ通信費が跳ね上がってしまう。私が申し込んでいたのは「パケ・ホーダイフラット」というデータ定額サービスなのだが、このサービスはドコモから購入した端末でないと、パケ・ホーダイフラット用のアクセスポイントが利用できないのだ。その代わり、テザリングなどを使用する時などと同じアクセスポイントに接続することになるのだが、料金が高くなってしまう。ドコモは携帯端末のIMEIを使ってアクセスポイントに接続可能な端末を識別しているため、この制限は「IMEI規制」と呼ばれている。

このことは案内はしているものの、これでは事実上ドコモでは他社製のSIMロックフリー端末を使えないのと同じだ。正直言ってがっかりだ。ソフトバンクのほうがずっとマシだった。

ガラスマ


IMEI規制のため、仕方が無いのでもともと持っていたSIMロックフリー端末ではなく、契約時に格安で購入したXperia arc(SIMロックあり)をずっと使用している。しかしこれが非常に残念な端末なのである。まず、不安定であり、少しの衝撃で電源が切れたり、何もしていないのにシャットダウンが始まったりする。ディスプレイの表面はプラスチックなので、フィルムを使わないとすぐに傷だらけになってしまう。ハードウェアの作りとしてこれはどうなのかと思う。

さらに不満が募るのがソフトウェアだ。プリインストールされているアプリケーションは個人的には全く必要のないものばかりなのだが、それらがメモリを圧迫している。にも関わらず、アンインストールもできないという困りモノだ。しかもその中のひとつ「セットアップガイド」とやらが、月に80MB程度の通信をしている。ふざけるのも大概にして欲しい。もしデータ定額でなかったらどうなっていたらと考えると恐ろしい。また、いくらmora等のアプリをプリインストール&アンインストールできないようにしても、DRMのついた楽曲サービスを好き好んで使うようなことはないだろう。もっと便利で、DRMのないサービスがあるからだ。アンインストールできないことへの怒りがこみ上げるだけだ!

不要なプリインストールアプリをアンインストールするには、俗に言うroot化をしなければならないが、作業にはリスクが伴うしroot化をすると保証も受けられなくなってしまう。Xperiaのroot化は流行っているということを耳にするが、噴飯もののプリインストールアプリを一度でも体験してみれば、それらを消し去るためにリスクをとるのも厭わないという心情が理解できよう。

キャリアの垣根がなくなった


断言しよう。ガラスマにプリインストールされているアプリは成功しない。特にキャリア限定でしか利用できないアプリは絶対にだ。

スマートフォンの功績は、携帯電話に共通のOSが出来たことにより、どのキャリアでも基本的に同じアプリやサービスを利用できるようになったということに尽きる。さらに言うならそれは国内だけではなく、世界中の便利なアプリやサービスが利用可能だ。そんな中、特定のキャリアに縛り付けられるためのサービスを誰が使いたいと思うだろうか。人は不便になるためにスマートフォンを使うわけではない。便利だから使うのだ。

土管化を避けることの意味


スマートフォンは、これまで携帯電話の利用者を縛り付けてきたキャリアにとってまさに黒船というべき存在である。スマートフォンはキャリアに開国を迫る。その結果待っているのは土管化だろう。キャリアは土管化を避けようと必至になっているようだ。

「土管化は避けたい」──「ドコモクラウド」の狙いと「iPhoneは難しい」理由 - ITmedia ニュース

土管化を避けるとは一体どういうことか。土管にならないということは、通信や通話以外のサービスでお金を儲けるということだ。キャリアが提供するとなると、必然的にそのサービスはキャリアに縛られることになる。すると、他のキャリアへ変更するとサービスを利用出来なくなるという弊害が出てくる。

キャリアは自社に利益が入るサービスを、あの手この手で使わせようと躍起になる。すると、携帯を購入すると永遠に使うことのない大量のプリインストールアプリがついてくることになる。

土管化を避けるための措置は、すべてユーザーの不便につながるだけだ。その結果どうなるか。それは数字が物語っているように思う。

6月も携帯電話純増数はソフトバンク首位、ドコモはプリペイド解約響く  :日本経済新聞

ドコモはアマゾンになれるか


普通に考えると無理だろう。

だいいちキャリアとEコマースではビジネスモデルが違いすぎる。Eコマースに必要なロジスティクスや商品戦略のノウハウとかは突然空から降ってくる類のものではない。ライバルには楽天だっているし、そんなに甘い市場ではない。

もしキャリアの立場を利用してユーザーを縛り付けるような仕組みで実現するならば、さらにユーザーが離れることになるのでやめるべきだと思う。

ユーザーが本当に望んでいるもの、それは土管


ユーザーは何故キャリアと契約するのか。それは電波を使いたいからであり、データ通信や通話をするインフラが欲しいからだ。更に言うなら、そのインフラが便利だからだ。人々は利便性のためにお金を払っている。キャリアが提供するその他のサービスを目当てに契約するというのは、もはや少数派だということを認めるべきだろう。

いくら過去にiモードや着メロ・着うたの課金での強烈な成功体験が忘れられないとしても、スマートフォンという黒船が来てしまった以上、もうそのようなビジネスモデルは完全に過去のものとなってしまった。

iTunesは土管


もしキャリアが今後も着うた・着メロのようなサービスで今後も儲けたいと考えているならそれは間違いだ。そのようなサービスは付加価値として提供することはできない。アップルはiTunesで大成功を収めているが、それは付加価値として提供しているわけではないという点は重要だ。アップルが成功したのはそれが社運をかけたプロジェクトであり、アップルのビジネスそのものだからだ。オマケではなくそれが本命の価値なのだ。ユーザーが求めているのは「価値」そのものだ。

アップルが提供するiTunesは、ミュージックストアから簡単な手続きで楽曲を購入し、PC(Mac)や携帯端末でそれらを手軽に楽しめるということにおいては群を抜いている。品揃え、便利さ、価格、端末、すべてが揃っている。筆者は使ってはいないが、iTunesが生活の一部になっている人というのは多いのではないかと思う。そのように生活の一部になっているものは、もはやインフラと言って差し支えない。iTunesは土管なのだ。

付加価値が持て囃される時代はもはや終わった。

情報家電の愚


少し話がそれるが、付加価値が価値を持つという幻想は、携帯のキャリアだけではなく日本中に蔓延した考え方のように思う。その代表格が電化製品(特に家電)ではないか。

日本の電機メーカーは付加価値が高いと考えて情報家電に大きく舵を切ったが、その結果は惨憺たるものである。生活の有り様が変わってしまうほどの製品なら売れるだろうが、そのような電化製品は決して付加価値の塊ではなく、今までにない機能を搭載した製品となるだろう。例えばRoombaなどがそうだ。掃除機ではあるが、付加価値があるから売れているのではなく、自動で掃除してくれるという便利さがあるから売れている。オマケはしょせんオマケだ。

白物家電は絶対になくならない。人が生きている限り需要は在り続けるからだ。電機メーカーが最後まで手放すべきでないのは白物家電だ。

白物家電の中では、最近はエアコンが好調らしい。

日本製エアコン快進撃 世界市場でも戦える「ダクトレス方式」 (1/2ページ) - SankeiBiz(サンケイビズ)

売れている理由は「ダクトレス方式」という「価値」がそこにはあるからだろう。人は価値のあるものには対価を払うものだ。付加価値ばかりに目が行ってしまって、本当の価値を見落としてしまうことにならないようにして欲しい。シンプルかつ高品質でその家電にとって必要な機能だけを追究した製品なら、日本製品もまだまだ世界で戦えるのではないだろうか。

電化製品は土管を目指すべきだ。

本当に儲かるのは土管


常々思っていることだが、キャリアは土管になっても十分やっていける。むしろ土管こそ本当に儲かるドル箱だ。携帯電話はもはや生活にとって必要不可欠であり、今後契約者数が人口以上に早いスピードで減ることはないと予想できる。(日本の人口は自然に減少していくので、契約者数も自然に減るしかなくなるだろう。スピードは緩やかだが。)携帯のキャリアは人がいなくならない限り必要なので、極めて安定したビジネスであるはずだ。通信を提供するためのコストを極力抑えてマージンを最大化すれば非常に儲かるビジネスで在り続けるだろう。土管化を避ける必要性など微塵も感じられない。

土管は儲かる。最後に立っているのは土管だ。

土管が儲からないというのは誤った印象だ。土管が儲かるからこそ、多大なMNPのキャッシュバックに金をかけることが出来るのだ。

なぜ通信費が高いのか


携帯のユーザーは通信費として料金を払っているが、実際には次のような負担を肩代わりされている。

  • 携帯端末の購入代金
  • MNPや端末購入の費用
  • 付加サービスの開発・メンテ費用

純粋に通信費だけを支払えば良いのならもっと安くなるはずである。特に携帯端末の購入サポートというのはもうやめにしてもらえないだろうか。実質0円ってなんだ!!機種変更をしないユーザーが理由もなく他人の携帯購入代金を負担するのは馬鹿げてる。

ところで、筆者はドコモでタイプSバリューとパケ・ホーダイフラットを契約しているのだが、割引が適用されなければ月々の料金は9000円近くになる。ソフトバンクの場合iPhoneだけが不当に安く、月々5705円で済むらしい。(参考:iPhone 4S / 4:バリュープログラム(i) | ソフトバンクモバイル)その他のスマートフォンの場合にはパケットし放題フラットが1000円以上高くなるが、それでもまだドコモでタイプSSバリュー+パケ・ホーダイフラットを契約するよりも割安だ。
キャリアは不当な料金をカットして、価格競争力を増すべきだと思う。

結論


というわけでb-mobileの1GB定額を申し込んだ。ドコモの回線には満足しているのでMVNOがベストな選択だという結論に達した。私が欲しいのは土管なのだ。さようならDメニュー。さようならSPモード。私にとって君たちは不要だった。

キャリアが付加価値という幻想から目を覚まし、最高の土管を提供することだけに邁進してくれる日が来ることを願っている。

0 件のコメント:

コメントを投稿