ここで概要を簡単に説明すると、クリエイティブコモンズはAll rights reservedではなくSome rights reservedのライセンス、つまり著作権を全て主張するのではなく、著作権の一部を主張するために考案されたライセンスである。著作権で守られたドキュメントや画像、写真、楽曲やその他著作物は再配布や二次利用が自由に出来ないが、クリエイティブコモンズライセンスによって許諾された著作物であれば可能なのである。クリエイティブコモンズライセンスでは、どのような利用方法が可能であるかを、4つの属性によって定義している。そして、その4つの属性を組み合わせることで、その著作物にどのようなライセンスが与えられているかが分かるのである。その4つの属性とは次の通り。
- BY・・・原作者の氏名(クレジット)を明記すること。
- NC・・・商用利用不可。(Non-Commercial)
- ND・・・改変不可。(No Derives)
- SA・・・改変したときは同じライセンスを与えること。(Share Alike)
- BY
- BY-NC
- BY-NC-SA
- BY-ND
- BY-NC-ND
- BY-SA
この度、Wikipediaで採用されることになったのは、CC-BY-SAである。明確に著作者のクレジットを表示し、なおかつ派生物に同じライセンスを与えれば、ドキュメントの改変や再配布を自由に行えるのである。CC-BY-SAははGFDLに近いが、GFDLよりライセンスが簡単で運用も楽なのである。
さて、Wikipediaのライセンスがクリエイティブコモンズになって何が変わるのだろうか?GFDLとCC-BY-SAは近いライセンスなので、実質的にはあまり変わらないというのが実情だろう。ただし、これまでCC-BY-SAでドキュメントを公開してきた人には朗報である。自由にWikipediaの文書を自らの著作物の中で利用することが出来るからである。逆に、Wikipediaで自分の文書を使われる可能性もあるが、その場合は明確にクレジット表示が残るというメリットがある。
CC-BY-SAと他のライセンスの互換性はどうか?という疑問が沸いてくることだろう。答えは、無し!!である。CC-BY-SAを用いた派生物は、CC-BY-SAライセンスでなくてはならない。ちなみに、このブログではCC-BY-NC-SAを用いているが、CC-BY-SAとは互換性がない。従って、Wikipediaの文書をこのブログで用いたり、逆にこのブログの文書がWikipediaで用いられるということはないのである。
ちょっと待て!!クリエイティブコモンズライセンスの互換性について分からなくなってきた!!
と思った人は、クリエイティブコモンズのFAQを見るといいだろう。互換性が表にまとめられている。このブログでも引用したい。(ちなみに、引用元はCC-BYなのでライセンス的にはOKである。)
二次的著作物 | |||||||||
利用される著作物 | CC -BY | CC -BY -NC | CC -BY -NC -ND | CC -BY -NC -SA | CC -BY -ND | CC -BY -SA | CC0 | ||
CC0 | |||||||||
CC-BY | |||||||||
CC-BY-NC | |||||||||
CC-BY-NC-ND | |||||||||
CC-BY-NC-SA | オトコ | ||||||||
CC-BY-ND | |||||||||
CC-BY-SA | Wiki- pedia |
つまり、WikipediaではCC0、CC-BY、CC-BY-SAでライセンスされたドキュメントを自由に使っていいが、その他のライセンスのドキュメントは使えない。このブログでは、CC0、CC-BY、CC-BY-NC、CC-BY-NC-SAライセンスのドキュメントを使えるわけである。しかし、Wikipediaのコンテンツを流用したい場合には、CC-BY-SAライセンスを利用しなければならない。このブログのコンテンツはCC-BY-NC-SAで利用出来る。
というわけで、CC-BY-NC-SAは少々悩ましいライセンスである。Wikipediaと互換性があったほうが多くの人にとってメリットがあるのは明白なので、NCを取ろうかどうしようか考え中である。
本来なら、ブログのようなコンテンツにはCC-BY-NDが望ましいだろう。ブログのコンテンツは一つのストーリーになっているので、勝手に改変されるのは困る場合があるからだ。(自分が上海に行ったと書いた日記が改変され、北京に行ったことにされた文書が流布してしまっては困るだろう。)しかし、このブログには技術的な内容を書いており、技術的なものは加工してまとめたり内容を修正したり加筆したりすることに意味があるので、あえてNDではなくSA属性をつけている。多くの人がお互いに技術文書を改編し合って、文書の質を高められたら素晴らしいことじゃないか。
クリエイティブコモンズライセンスは元々、著作物を二次利用(再配布・改変など)する場合に生じる種々の面倒で不便な問題点を解決するために考案されたライセンスであり、そのような不便を解消して、著作活動にさらなる創造性をもたらすものである。もし、ブログなどの文書を公開する場合に、まだどんなライセンスにするかが決まっていない場合には、ぜひクリエイティブコモンズライセンス(のどれか)を選択して欲しい。
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